大日岳 ダイニチダケ 標 高 2128m 日本百一名山

山 域

飯豊連峰
北股岳 キタマタダケ 標 高 2025m 越後百山

山 域

飯豊連峰
登 山 記 録
登山月日 2005年5月29日〜30日
登山経路 5月29日
山形県小国町長者原5:30〜飯豊山荘6:40/7:10〜温身平7:40〜雪渓末端8:50〜石転び沢出合9:30/9:40〜中ノ島〜梅花皮(カイラギ)小屋13:05/13:35〜梅花皮岳〜烏帽子岳14:35/14:45〜御手洗池〜御西小屋17:35

5月30日
御西小屋4:30〜大日岳6:00〜御西岳7:40〜御西小屋7:50/8:25〜烏帽子岳11:00/11:15〜梅花皮小屋11:50〜北股岳12:25〜梅花皮小屋12:45/13:15〜中ノ島13:35〜石転び沢出合14:15〜雪渓末端14:45〜温身平15:50〜飯豊山荘16:35〜長者原17:50
行動時間 第1日目12時間05分 第2日目13時間20分 合計25時間25分(休憩時間を含む)
天  候 第1日目 晴  第2日目 晴のち曇
メンバー 単独

情  報

アクセス 長者原までは舗装道路で問題なし 飯豊山荘までの林道は未整備のため冬季閉鎖中
トレイル 温身平〜雪渓末端まではひどく荒れた登山道 雪渓歩きは快適も最後は傾斜がきつい 縦走路は一部夏道もでているがまだ80%は残雪上歩き 大日岳への道も同様最後は100mの雪渓 梅花皮小屋から北股岳への登山道は上半分が雪渓となっている
水場・トイレ 水は梅花皮小屋裏にあり、トイレはそれぞれの小屋にある
その他 縦走路上にはまだ花が咲いていない

 
梅花皮沢の清流を見ながら飯豊山荘へ

 
石転び沢出合から見る石転び沢雪渓の全景


中ノ島上部の石転び雪渓最上部

 
梅花皮岳から見る飯豊本山方面


烏帽子岳から見る飯豊本山から大日岳方面真ん中が御西岳


後に見える縦走路を歩いて御西小屋へ


御西小屋から見るモルゲンロードに染まる大日岳


夜明けの飯豊連峰と二王子岳方面


大日岳山頂


飯豊本山方面


北股岳・烏帽子岳方面


大日岳直下最後の雪渓は約100m位か


御西岳から大日岳方面


梅花皮小屋からは30分で登れる北股岳

山行記

5月29日
新潟県関川村の道の駅で仮眠をとり、夜明け前に山形県小国町小玉川の飯豊登山口を目指す。
飯豊山登山口のある看板に従い、R113から30分も走ると林道入り口の長者原についた。まだ5時を廻ったばかりというのにゲート前には渓流釣りと山菜採りの監視人がしっかりと監視していた。
飯豊山荘までは4キロ・1時間かかるというのでがっかりするが仕方ない。
支度を始めると宮城県から来たという同年輩の方が出かけるところであった。声をかけると「今日は梅花皮小屋まで日帰りだ」という。私は「御西小屋に廻って明日大日岳を踏んでからダイグラ尾根を下る」というと、びっくりした顔で「ダイグラ尾根は9時間掛かった」というので反対にこちらがびっくりするのである。いっぺんに大日岳までピストンすることに計画変更するのであった。
水は梅花皮小屋で取れることを確認してきたので少しでも軽い荷にして登山道に入る。ザックにスキーを担いだ若者がマウンテインバイクに乗って追い抜いてゆく。いくら舗装道路でも4キロの道のりはこの長丁場の登山のプロローグとしては長すぎる。1時間10分掛かって飯豊山荘に到着した。まだ冬季閉鎖中であった。ここで休憩をしながら朝食を摂る。この間にも夫婦連れがスキーを担いで登って行った。
次の目標温身平には30分で到着した。本来ならばここまで車が入れるようで、実際地元車両が10台ばかり停まっていた。(後で分かったことであるが、地元山岳会が30人ばかりで冬山遭難救助の訓練をしていた)ここまで長者原から2時間過ぎていたのでがっかりする。ここが石転び沢とダイグラ尾根の分岐となっている所である。
ここからが登山道となり、いきなり残雪を踏む。しばらく歩くと巨大な砂防堰堤に出る。堰堤の階段を登ると本格的な登山道となる。しばらく進むとひどく荒れた道となり、小沢の橋は朽ちて殆どなく、今にも踏み抜きそうなスノーブリッジを越え、そして梅花皮川に転落しそうな怪しい道を慎重に進む。「何だこの道はひどすぎるよ」と愚痴をこぼしながら1時間もあえぐと残雪の河原に出た。
先行する山スキーヤーが支度を整えていた。私もここでアイゼンを装着してびっしりと締まった雪渓の河原をスキーヤーと話をしながら登る。
石転び沢出合には50分ほどで到着した。目の前に石転び沢の全景が開けていた。3年前に登った毛勝谷の雪渓に匹敵する長大雪渓が山頂稜線まで延びている。思わず背筋が凍りつくような感動と恐怖感が沸いてくる。カメラに納めていよいよ石転び沢雪渓に入る。落石が転々としているところも毛勝谷に良く似ている。先行するスキーヤーはシールをつけて私との差をどんどん広げて行く。「あせっても駄目自分のペースで」とゆっくりゆっくり進む。落石に細心の注意を払いながら傾斜の増した雪渓を登る。2時間以上掛けて雪渓最上部の休憩ポイント・中ノ島に到着する。先行したスキーヤーが「ここから滑降する」と休んでいた。屏風のようにそそり立つ最後の雪渓上には30人ばかりの団体が大声上げていた。どうやら地元山岳会の救助訓練のようである。40度を越えるような急斜面をアイゼンで下る訓練をしているので大いに参考になるのであった。私も靴紐とアイゼンをしっかりと閉めなおして最後の登坂に掛かる。トレースをしっかり拾い、あえぎながら登り、雪渓に入って3時間半以上をかけて飯豊連峰の稜線に立つ梅花皮小屋に到着することが出来たのである。
登ってきた雪渓を見下ろしながら大きなため息をつく。放心状態でしばらく休憩を取る。しかし今日の目標はここが終点ではないのだ。ここから3時間半先の御西小屋であることは決して忘れてはいない。
昼食を摂り、小屋の近くの水場で水を補給した後、御西小屋目指して縦走路に入る。内股の筋肉が悲鳴を上げているが泣き言は言っていられない。ここから先はもう私一人しか入っていないことを知っている。
30分で梅花皮岳につきそして又30分で飯豊連峰の絶好の展望台烏帽子岳に着く。
前方には飯豊本山から大日岳までの全容が雪を被って光り輝いている。後方を振り返ると北股岳が圧倒的に聳えている。この中に今私は一人でいるのだと思うと武者震いするのであった。行く手を見るとかすかに御西岳に小屋が見える。とにかく「あそこまで2時間半・頑張ろう」と気を引き締めて縦走路を急ぐ。夏道もあるが殆ど残雪の上を笹薮境に進むのである。疲労もピークに達して、登り勾配になると殆ど足が進まない。あえぎあえぎ次の目標を決めながら進む。小さなアップダウンをいくつか越えてようやく御西小屋が手に届くピークを越える。残雪の中をゆっくりゆっくり歩いて、梅花皮小屋からは4時間も掛かってようやく今日の終着御西小屋に到着した。
避難小屋の2階にはしごで登り、ドアーを開けるとようやく安堵の気持が湧いてくるのであった。
濡れた下着を着替えると生きた心地がする。ザックから寝袋を出して足をもぐらせる。500mlのビールを飲み、更に紙コップの酒を飲むと疲労感と睡魔が押し寄せてそのまま食事もとる元気もなくなって眠りに落ちる。3時間ほど仮眠すると尿意をもよおして起きる。やはり腹も減っているようである。アルファ米もあるがここはラーメンを作りお腹を温める。ローソクの明かりの中でたった一人この飯豊山中にいるのかと思うとなんともいえない感慨にふける。そして又睡魔が押し寄せて・・・。

5月30日
夜間,目を覚まし窓外をのぞくとガスが掛かっていた。朝起きてガスがかかっていたらどうしようかと心配したのであるが、窓が明るくなった4時頃に窓外をのぞいてみると夜明け前の大日岳がくっきりと見る。{ラッキー」と一声あげてもう一度眠ろうとするが寒さで寝ていることができない。寝袋の中でふるえているくらいなら起きて行動を起こそうとする。寝起きでは食欲もなく、明るくなり始めた4時半にはカメラとパンをポケットに入れてピッケルもってモルゲンロードに染まる大日岳を目指す。
凛とした空気の中、残雪を踏む。頬に痛いくらいの風が吹いている。一部急坂はアイゼンを装着する。登山道は夏道も現れていて、みるみる間に大日岳が迫る。少し急になった夏道のトレイルを進むと大日岳直下は約100mほどの雪渓になっていた。
アイゼンをしっかり着けてピッケルを持って最後のアタック開始だ。早朝6時前の雪渓をよじ登る姿に一端のアルピニストを自認してなんだか誇らしい気持ちになる。途中何回か息を入れながら雪渓を登り切ると大日岳山頂に到着した。時計はちょうど6時を指していた。
二王子岳から杁差岳そして北俣岳などの飯豊連峰の主稜線が朝日を浴びて光り輝いている。来た道を振り返ると御西岳の彼方には飯豊本山が逆光の中に堂々とそびえている。そして右側には飯豊連峰の福島県側を形造る三国岳に高度を落しているのである。まさに飯豊連峰の最高峰大日岳はすばらしい展望を見せてくれるのであった。
飽くなき展望をカメラに納めながらポケットのジャムパンを頬張る。5年前になるだろうか、息子と二人飯豊本山まで来て、大日岳をあきらめて下山したことが思い出されて感慨深い。10分ほどの滞頂で名残を惜しみながら下山を開始する。
雪渓の下りは登りより慎重にゆっくりと下る。
花の名山であるので登山道に花を探すがまだまだ早くて花は一つも咲いていないことが残念ではある。しかしそれにもましてすばらしい残雪のコントラストを見せる飯豊連峰を堪能しながら御西岳に戻る。
小屋に戻って荷物をまとめ(飯豊本山経由してダイグラ尾根を下るという当初目標は断念し)昨日来たトレイルにトレースを拾いながら戻る。30分も歩くと回りの山々にガスがかかりはじめる。それでも道をふさぐほどではなく何とか昨日のトレースを追うことができる。
烏帽子岳までは昨日所用3時間のところを2時間半で帰ることができ、ここまでくれば先も読めてて一安心だ。
梅花皮小屋には12時前に着く。疲労がたまっているが、ここはもう一踏ん張りして飯豊連峰のど真ん中の名峰・北股岳を目指す。ここも頂上直下は雪渓となるが、良く堪えてガスで展望のない山頂を踏むことができた。
梅花皮小屋に戻り、腹ごしらえをして、最大の難所・石転び沢雪渓の急傾斜の下りにかかる。しっかりと支度を整え慎重に雪渓を下り始める。ガスが掛かっていて石転び沢の全容が見えないが、とにかく勾配40度を超える雪渓をアイゼンをしっかり利かせながら下る。中之島まで20分の緊張は汗びっしょりかいていた。
中之島まで下れば一安心。後はガスも切れて石転び沢の全景を見ながら安心して下ることができた。
約5キロの雪渓を下った後がまた大変である。荒れた登山道を登りよりも時間をかけて温身平まで下ることになる。温身平まで下ると完全なグロッキー状態となり、飯豊山荘へは40分、そこから長者原の駐車場までは1時間10分掛かり、まさに修羅場の道であった。
4時半に行動開始して長者原には18時近くになっていた。ここに帰り着くまで昨日の梅花皮小屋から1日半、誰とも会う事のない飯豊山中であった。
車で
R113に出て関川村の「道の駅ゆーむ」で汗を流す。
近くの奥胎内で工事をしている昔の仕事仲間と食事をとると、酒の酔いもあって、ぼろ切れのように車の中で一晩を過ごすのであった。
大満足の飯豊大日岳山行はまた大きな疲労をもたらしたのである。

 

北股岳〜頼母木山〜大石山の記録
杁差岳の記録

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