山行記 深夜のR152を上田・白樺湖・茅野・高遠と走り、早朝5時前には戸台についた。
戸台の登山道ゲートの脇の側道を抜けて、戸台川の河川敷を2キロほど走ると発電用堰堤があり、そこが車の入れる終点である。これは2週間前長い戸台川を歩いたときに確認してきたアプローチの短縮を図った
夜がまだ完全に明けきらない川原で、朝食をとり、5時半過ぎに出発した。若い鹿であろうか盛んに鳴声が聞こえる。15分ほど歩いてポリタンクに水を補給しようとザックを開けてみると、なんと昼食のおにぎりの包みが入っていない。車の中に置き忘れてきたことに気づき走って戻る。川原に置き放しにされたおにぎり包みを見つけて「早く気がついって良かったなー」と思う反面「せっかくアプローチ短縮したのにこれじゃ何にもならない」と嘆くのである。
前回通り過ぎた鋸岳分岐には1時間少しで到着した。徒渉地点も水量は少なく、軽く渡って角兵衛沢に取り付く。ガイドブックによるとここから大岩の小屋迄3時間角兵衛沢のコル迄更に1時間40分の長丁場であるので緊張し気を引き締めて、一本調子の樹間の中の急登を黙々と登る。
見る見る間に汗が滴り落ちる。
1時間半もあえぎ、ようやく樹林帯を抜けると戸台川を隔てた対岸に北沢峠に走るバスが垣間見えるようになる。ここからがいよいよ難所の岩礫・岩屑の登りになる。
最初は大きな石を拾いながら足場もしっかりしているが、そのうちに砂礫状の滑りやすい足場が次々と崩れて手も使わないと前に進まない。上を見るとその岩礫・岩屑が崩壊するのではないのかと恐怖感が募る。岩礫・岩屑地には枯れ木にテープが巻いて案内をしているがそれも見失いがちとなる。最後は大きく左岸スフィンクス岩側にトラバースして角兵衛のコルに到着した。時間は11時ちょっと前でこの急登を3時間45分あえいだことになる。
肩で大きく息をしながら呼吸を整える。仙丈ケ岳にはガスがかかり始めている。最後の岩場を急いで攀じるがスタミナを使い果たしていてピッチが上がらない。あえぎあえぎ頂上へは11時20分到着した。山頂につくころは残念無念ガスが上がってきて展望が利かなくなってしまった。
昼食をとりながらガスの晴れるのを待つ。
縦走路を甲斐駒ケ岳方面に歩いてみると見ると、恐れるほどの事もなく、これなら鹿の窓までは行って見たいものと思うが今日は時間が足りない。
結局晴れる様子もないので、1時間半の山頂スティで往路を下ることにする。
岩礫・岩屑の角兵衛沢の下りは、足を載せた岩屑が崩れて足場がままならない。とにかく石車・浮石には十分注意を払い、一歩一歩足場を固め足を突っ張りながら下るのであるから、登るときより大変である。その上、途中から霧雨となり岩が濡れて危険この上ない状態となる。それでも冷や汗をかきながら、慎重に慎重に樹林帯まで下った。
更に長い急坂の樹林帯を下って、戸台川の川原に着くころには、太腿の筋肉が悲鳴を上げて、股関節が熱をおびているのが分かった。
戸台川の清流で汗を拭き、更に1時間かけて駐車場所まで下った。
今日も朝から誰一人会う人もないたった一人の鋸岳であったが、宿題と楽しみが残った
甲斐駒ケ岳〜鋸岳縦走の記録
鋸岳敗退の記
迷い込んだ七丈の滝下
登山月日 2002年8月28日
登山経路 戸台登山基地〜丹渓山荘〜赤河原〜七丈の尾根引き返す
天候 晴
メンバー 単独
南アルプス北沢峠への基点、仙流荘へは早朝6時前に着いた。登山靴を履いている間に戸台の駐車場はまだ先であることに気づく。急いで戸台の北沢峠への旧登山基地に車を走らせた。
ここは南アルプススーパー林道が開ける前の登山基地で、今でも登山指導所がある。ここで支度を整えて、広い戸台川の川原を進むのであるが、川原には水が流れていない。発電用に利用されているのか、伏流しているのかこの奥深い沢に水が流れていないということは異様である。
ネットの情報で、鋸岳分岐まで1時間50分くらいと読んできたのであるが、登山道脇にそれらしき標識を見つけられることが出来ず、2時間歩いて丹渓山荘(今は廃止状態)まで来てしまった。ここも北沢峠か開ける前までの仙丈ケ岳や甲斐駒ケ岳の基地であったようだ。この時点で「間違ってしまったな」と90%確信したのであるが、「駒ケ岳六合コース」の看板の脇には「鋸岳」の表示もあれば、その道を躊躇なく進む。ケルンに導かれて対岸に渡れば赤いテープも見られて、これが鋸岳への正規ルートと思うのである。更に樹の幹や岩に赤ペンキで矢印が有れば、やっと探し当てた登山道と勘違いするのであった。しかし10分もするうちに踏み後も消えて何回となく彷徨を繰り返す羽目になる。
ようやく次の赤テープを探して進めば、そこにはお地蔵さんと古い遭難慰霊塔が建つ寂しいところで、古道の趣が感じられる。さらに進んで、滝から流れ落ちる沢の合流地点に着く。腹ごしらえと休憩を入れてあたりを見渡しながら、流れ落ちる滝と岩場に囲まれたこの場所から次の進む方向を探すのであるが、登山道らしきは見つからない。
巨石が流れ落ちる沢にかすかに踏み跡を見つけて迷い込む。いつ落ちてくるかも分からない落石の恐怖におののきながら、一心不乱に沢を登る。遠くを見れば北沢峠に登る林道と肩を並べるのである。1時間半位、岩場をあえいだろうか、ようやくたどり着いたオーバーハングの最後の岩場をトラバースして草つきに進んで大きく肩で息をする。更に尾根を越えて隣の沢に出ればここは草つきの沢で登るのも容易で少し安心する。なおも進めば足元からヤマドリらしきが羽ばたいて肝を冷やす。
木の幹に案内標識らしきを見つけて、死に物狂いで登りつけば、古ぼけた「駒ケ岳六号石室コース三合目」の看板である。
ようやくここで我に返り、間違いなく古い道に迷い込んだことを自覚する。この先を見れば何の踏み跡もない。ここまではきっと何人かが迷い込んだなと思うときびすを返して、登ってきた道を引き返すのであった。
慎重に落石の沢を下り赤川原と思しき合流地点に戻る。ここで回りを観察すれば、七丈の滝が流れ落ちるのを確認し、すでにここは甲斐駒ケ岳山中で、双児山直下であることが分かった。丹渓山荘に下り登山道を20分も下れば鋸岳分岐角兵衛沢コース標識を見つけて天を仰ぐのであった。
絶好の青空の天高く鋸岳が白く輝いていた。
恥ずかしながら、地図とガイドブックを忘れてきたのだから、仕方ないとあきらめて、長い戸台川のかわら歩きを続けて車に戻った。
(6時45分から16時ちょうどまでの10時間の学習をしたと思っている)
近いうちに再挑戦いたします
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