甲斐駒ケ岳〜鋸岳

甲斐駒ケ岳 カイコマガタケ 標 高 2966m 日本百名山

山 域

南アルプス
鋸岳 ノコギリダケ 標 高 2685m 日本二百名山

山 域

南アルプス
登 山 記 録
登山月日 2007年8月24日〜8月25日
登山経路 8月24日
戸台大橋8:15〜バス〜北沢峠9:15〜双児山10:50/11:05〜駒津峰11:42/11:50〜甲斐駒ケ岳13:10/13:45〜六合石室15:05

8月25日
六合石室5:15〜三ツ頭5:55〜熊穴沢ノ頭6:30/6:35〜中ノ川乗越7:00/7:20〜第二高点7:50/8:05〜鹿窓8:42〜小ギャップ8:52/9:06〜第一高点9:20/10:00〜角兵衛沢のコル10:12〜戸台川川原12:35/13:00〜戸台大橋14:40

行動時間 第一日目 5時間50分(北沢峠〜六合石室)
第二日目 9時間25分
合計 15時間15分 (休憩時間を含む)
天  候 第一日目・第二日目共に晴
メンバー 単独

情  報

アクセス 戸台大橋までは村道 北沢峠へは南アルプススーパー林道バス
トレイル 甲斐駒までは人気のトレイル 鋸岳縦走路もペンキマーク・鎖場良く整備されている
水場・トイレ 水は北沢峠・六合石室の近くで取れる(山行記の※参照) トイレは北沢峠で
その他 慎重に歩けば鹿窓をくぐることが可能だ
第一日目

駒津峰からの甲斐駒ケ岳

甲斐駒の石祠

一等三角点標石

甲斐駒山頂で

鋸岳へは危険

九合目から甲斐駒ケ岳を振り返る

九合目から目指す鋸岳方面

六合石室

六合石室
 
石室〜10分で水取れる
 

山行記

戸台大橋に車を停めて北沢峠へのバスに乗る。平日ではあるが登山客が多く8時15分発の臨時バスであった。バスの窓から見る鋸岳は、はやる気持ち以上に不安が募るのである。
北沢峠で水を補給し、18キロくらいの重さになったザックを担いで双児山経由で甲斐駒ケ岳への登山道に入る。樹林帯の中にジグザグを切った登山道は程よい傾斜で30分に一度休憩を入れながら登ると殆ど疲れも感じない。最初の休憩を取っていると後続の若者二人が追いついてきた。装備を見ると間違いなく鋸岳縦走者であることが分かる。「鋸岳縦走ですか」と声かけると「そうです」と言う返事が返ってきた。私は今までの不安が少し和らぐのを覚えた。結局この後、この二人と前後しながら鋸岳縦走を果たすのである。
双児山に着くと今朝北沢峠の小屋を出て、甲斐駒ケ岳を踏んだ登山者が続々と下山してきた。更に駒津峰に登ると花崗岩で真っ白な甲斐駒ケ岳が目に飛び込んでくる。3回目ではあるがいつ来ても素晴らしい眺めである。駒津峰で鋸岳への縦走路を確認し、イメージを膨らませる。
六方石を過ぎて甲斐駒ケ岳へは直登コースを選ぶ。取り付き直後に大きな岩場があって少し難儀をするが、途中からは岩場の中にしっかりとしたコースが延びていた。3度目の甲斐駒ケ岳には13時過ぎの登頂となった。今日はこれから六合石室までと思えば気も楽になり、ゆっくりと山頂スティを楽しむ。後続の若者が巻き道に回り、摩利支天を踏んで13時40分に到着した。「お先に石室に入るよ」と声かけて鋸岳への登山道に入る。
この道は古の[七丈の滝尾根コース]で赤河原に下る道であったが、[七丈の滝尾根コース]は、今は廃道となっていて、鋸岳縦走者のみが利用する登山道である。日本百名山でも人気上位の甲斐駒ケ岳山頂は登山者で大賑わいするが、こちらに入るものは殆どいない。私も少し不安を持ちながら、ケルンと踏み跡を追うのであった。
六合石室までは岩場が連続するが迷うことも危険なところもない(一箇所鎖場もあるが心配はない)。1時間少し下り、駒津峰や双児山よりは高度を下げたなと思う頃、左側に六合石室が見えてきた。巨石を縫って石室に着くと思いの外立派な避難小屋であった。周りはブロック状の石に囲まれているが屋根は葺き替えられて、内部は板張りになっていて詰めれば10人くらいは休めそうである。
荷物を下ろし、小屋の前の岩場で寛いでいると30分遅れで若者が到着した。私は3リットルの水を持っていたが水場確認のために水場に出かける。

取水した後、小屋に戻り、小屋の前で持ってきたビールと3合の日本酒を飲みほろ酔い加減でいると、鋸岳方面からの単独行者が小屋に到着した。鋸岳の情報を得ることが出来て安心する。
簡単な夕飯を済ませると日が暮れる。今日の六合石室は」若者2名と鋸岳からの縦走者1名そして私の4人であった。外は月明かりの中、ゆっくりと休むことが出来た。

(※)水場
石室から鋸岳方面に登山道を3分ほど進み砂礫地に出ると境界見出し杭がある。そこから下方の樹林帯にしっかりとした作業道が延びていた。作業道を10分ほど下ると露出した岩場の沢の源頭部に出る。岩場には涸れそうではあったが水が滲み出ていた。少し下るとポリタンクに汲めるほどの水量となっていて、2リットルに3分くらい掛かったが水を取ることが出来た。3リットルほど取水した後、樹林帯を登り返し小屋に戻る。
取水時間も含め往復30分くらいは掛かった。

 

第二日目


朝日を浴びる仙丈ケ岳

タカネコウリンカ

タカネビランジ

第二高点の岩壁

クーロアールを越えて第二高点へ

中ノ川乗越を振り返る

第二高点〜第一高点を見る

第二高点

第二高点

第二高点〜仙丈ケ岳

大ギャップ

大ギャップの底を行く

大ギャップの底を見る

鹿窓が見えてきた

鹿窓の岩場に咲く
 
信州側から          鹿窓         甲州側から

小ギャップの垂直壁

第一高点にて

第一高点にて(着かず離れず歩いた2人)

中央アルプス

甲斐駒方面

北岳方面

角兵衛沢の最上部
 
ザレタ角兵衛沢を登る登山者

山行記

4時には起きて朝食をとる。パッキングを済ませて石室の外に出ると対岸の仙丈ケ岳が朝日に染まる時間であった。甲斐駒ケ岳〜六合石室までは岩稜の道を歩いてきたが、六合石室からは潅木の中の道になった。10分もしないうちに[七丈の滝尾根コース]の分岐に出るが、このコースは「危険の為・通行禁止」の看板が掲げられていた。(私も7年前赤川原からこの道に迷い込み、三合目まで登りついたことがあるが、崩壊激しく、とても利用できる登山道でないことは知っている)
最初のチェックポイント三ッ頭には石室から1時間もかからずに到着した。三ッ頭を過ぎるとすぐに烏帽子岳方面への道が分かれていたが踏み込む心配はなかった。樹林帯の中、アップダウン・崩壊地の縁・ガレバなどを通過しながら次の目標熊穴沢ノ頭を目指す。
縦走路には場所やピークを表示するものは殆どないから、その都度地図を広げて確認しなければ通り過ぎてしまう。熊穴沢ノ頭も樹林帯の中を登りきったところで大きく下り始めたので地図を広げて確認できた。ゆっくり歩いてきたつもりだが[ヤマケイのアルペンガイド]のコースタイムよりは随分と早く歩いているようだ。休憩を取っていると六合石室を私より20分遅れで出た若者2名が追いついた。鋸岳の核心部を前にグッドタイミングではあった。
熊穴沢ノ頭からは急坂を中ノ川乗越に下る。眼前には第二高点が近づいてくる。途中崩壊地の縁で登山道が崩れていて、一歩踏み間違えれば滑落の危機にも見舞われるが慎重に歩いて中ノ川乗越に着いた。六合石室からは縦走路に咲く花をカメラに収めたり、後続を待って休憩も挟んでいるので実質的には所要1時間半というところである。何箇所か分岐もあったが、まず道を間違える心配はなかった。
中ノ川乗越の前方には第二高点の大岩壁が聳えている。ここからが鋸岳の核心部である。私はヘルメットを装着し、ウェストポーチはザックの中にしまい、行動しやすい支度にする。そして若者の後を追うことにする。見上げると首が痛くなるような急坂のクーロアールを慎重に登る。足元も心配だが右側の大岩壁からの落石も気が気ではない。先行する若者とは徐々に離されてゆくが、自分のペースを守って登る。下部はザレタ道であったが上部は草付になり、岩稜に変わると鉄剣の立つ第二高点に到着した。
尖った第一高点が目の前に聳えている。その間には大ギャップ・鹿窓・小ギャップの難所があるのだが、ここからはそれらの難所は見ることが出来ない。肩で息をし、若者と写真を取り合いながら15分ほど休憩する。そしていよいよ鋸岳の最大難所へと向かうのである。

第二高点からは山頂部の岩稜を5分ほど下るとダケカンバの中にしっかりとした登山道が切られていた。道は二つに分かれていたが、踏み跡鮮明な左の道に進む。右方面を見上げると大ギャップのキレットが目に入る。慎重に下ると岩屑のルンゼとなる。岩屑に足を乗せるとガラガラと崩れ、落石が発生し、先行の若者が悲鳴を上げていた。大ギャップの底を慎重にトラバースし、鹿窓側の岩場のバンドに取り付く。ここで安心するわけには行かない。急傾斜のバンドを岩場に手がかりを求めるのだが触る岩は直ぐに剥離しとても手がかりにはならないのである。鹿窓側の岩場につくと草付となり少し安心する。上方を見上げると鹿窓が望まれて、いよいよ難関突破が現実となってきた。
草付のジグザグを登ると鹿窓も大きくなってきて、鹿窓から下がる鎖に取り付く。若者は鹿窓を通過して行った。私は感動よりも恐怖感のほうが強く鎖にしっかりとつかまりながら一歩一歩足を進めるのであった。鎖の長さは10mはあるだろうか、鎖につかまりながら鹿窓に向かう途中で鎖の振動で落石が発生し、こぶし大の石がヘルメットを直撃する。一瞬たじろぐが事なきをを得て、前進する。そしてとうとう多くの岳人憧れの南アルプス鋸岳の鹿窓をくぐることが出来たのである。鹿窓のテラスで肩で息をしながら休憩する。ようやく踏めた憧れの鹿窓である。
鹿窓からは甲州側に回り、岩場をトラバースして小ギャップへの下りとなる。ここにも長い鎖が下げられていて安心して小ギャップの底に下り立った。そしてそこにはこのルート最後にして最大の難所7mの垂直壁が立ちはだかっていて、先行の若者も岩場を見上げながら一息入れていた。3人でどう登ろうかと思案する。若者の一人H君が鎖など少しも頼りにせず三点支持の岩登りのお手本を見せて苦もなく登りきったのは驚きであった。続くk君は鎖に掴まりながらも難なく登りきる。私は「ここは最後まで付き合ってくれ」とお願いして鎖を頼りに岩場に取り付くのであった。少々危ない姿勢もあったがトライしたからには途中で諦めるわけには行かない。鎖をしっかり掴み、強引に体を持ち上げる。そして何とか安全地帯に登りきることが出来た。最後の難所を登りきりH君とがっちり握手をした。
そこからは岩稜の道を15分ほど登り、六合石室から4時間・9時20分に第一高点に到着したのである。一点の曇りもない快晴の空の下、甲斐駒ケ岳〜歩いてきた鋸岳の縦走路が良く見える。そして北岳や仙丈ケ岳そして中央アルプスの山々が私の快挙を祝福してくれるかのように輝いていたのである。着かず離れず一緒に歩いた若者と鋸岳縦走の感激を分かち合う。お互いに名乗りあうとお互い福祉に関係することを知り、縁が深まる思いであった。第一高点では40分ほど滞頂する。
長く厳しい角兵衛沢を思うとゆっくりもしていられない。一度下った経験のある私が先導し、角兵衛沢コルに下る。更にザレた岩屑の角兵衛沢を下ると、今朝、戸台を出た登山者が続々と登ってきた。「甲斐駒ケ岳〜鋸岳縦走した」ことを告げると羨ましい言葉が出るのであった。
登山靴がフィットせず、足痛を起こしたK君を尻目に私はグングン下る。岩屑のザレ場を過ぎ、天然のカラマツ林に入っても傾斜は緩まない。委細かまわずノンストップで戸台川原に下ったのである。
戸台川の川原で二人を待ちながらラーメンを作り昼食をとる。H君が「相棒が足痛を起こしているので先に行ってください」と下りてきた。私は納得して戸台川原を歩き始める。5年前に2回歩いた道ではあるが記憶も薄れがちで駐車した戸台大橋への時間が読めない。じりじりと照りつける太陽に熱中症が心配になる。川原歩きといっても水の涸れた川原である。ザックに残した少しの水を飲みながらホウホウの態で戸台の駐車場に続いて、戸台大橋に帰り着いたのである。車に戻った後は着替えを済ませ、来た道を2キロほど戻ってK君・H君をピックアップする。そして仙流荘の駐車場に送り届け、高遠・茅野・白樺湖を経由して帰宅した。

 

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