小蓮華山 コレンゲサン 標 高 2769m 百高山 山 域 北Alps
鉢ヶ岳 ハチガタケ 標 高 2563m 標高1003山 山 域
雪倉岳 ユキクラダケ 標 高 2617m 日本の山1000 山 域
登 山 記 録
登山月日 2017年9月25日〜26日
登山経路 9月25日
蓮華温泉7:50〜天狗の庭9:40〜白馬大池11:05/11:15〜船越の頭〜小蓮華山13:15/13:25〜三国境14:10〜雪倉避難小屋16:00(泊)
9月26日
避難小屋5:00〜雪倉岳5:50/6:05〜避難小屋6:45/7:20〜鉢ヶ岳分岐7:35〜鉢ヶ岳8:05/8:25〜分岐8:40〜蓮華鉱山道分岐9:45〜瀬戸川橋13:05〜蓮華温泉14:15
行動時間 第一日 8時間10分 第二日 9時間15分 合計 17時間25分(休憩時間・ロスタイム含む) 
天 候 第一日 晴 第二日 晴
メンバー 単独
情   報
アクセス 蓮華温泉まで舗装道
トレイル 一部ゴーロの道あるが人気の百名山トレイル
水場・トイレ 白馬大池の小屋 雪倉避難小屋にtoiletある この時期縦走路で沢水を補給は難しい
その他 縦走路を行く登山者も少ない
山行記


山麓から白馬・雪倉・朝日岳方面 天狗の庭から鉢ヶ岳・雪倉岳


白馬大池・船越ノ頭


小蓮華山三角点・白馬大池方面


三国境への稜線・三国境から雪倉岳

 
縦走路から見る鉢ヶ岳・雪倉岳

<一日目>
平日の朝であったが蓮華温泉の駐車場は8割がた埋まっていた。避難小屋泊りのザックを担いで登山道に入る。2010年白馬大池から下った道であるがほとんど記憶からは消えていた。登山道は緩く快適の登って行くが中々高度を上げない。2時間近く歩いて標高2100mの「天狗の庭」に着き一息入れた。天狗の庭からは様相一変し巨石累々の道を行く。白馬大池には登山口から3時間以上かかってしまいきょうの行動予定を変えるしかなかった。白馬大池で昼食を摂り飲料水を補給して白馬岳への登山道に入る。こちらはザレ場もあるが快適トレイルが続き、船越の頭で一息入れて少し傾斜似ましたトレイルを小蓮華山に登り着いた。きょうの宿の雪倉避難小屋方面も良く見えて何とかたどり着けそうで一安心できた。三国境には緩く下って行き、少し登りかえして2時過ぎに着いた。当初予定ではここから空身で白馬岳往復をと思っていたのだがこの時間からは無理である。三国境でも一息入れ、雪倉岳方面への縦走路に入り、ザレ場を下って蓮華鉱山道分岐で一休みした。鉢ヶ岳山頂をへの旧縦走路を登る気力は無く、山麓の縦走路を行く。巻道の沢で宿泊用の飲料水を確保できるものと思ってきたが最初の沢は涸れていてがっくりしたが、雪倉避難小屋まで10分ほどの2番目の沢に来るとかすかな水音がして上部の設計から水が流れていて小躍りする。小さな水たまりを作ってマグカップで掬い取りながら2リットルの水を確保できて胸をなでおろした。何の心配もなく雪倉避難小屋に知多。沢を詰めてきたと云う大阪からの夫婦が先着していた。暮れゆく雪倉岳を窓外に眺めながら、持参したビールを沢水で冷やし、さらに3合の日本酒・2合の焼酎を飲んでレトルトのカレーを食べてシュラフに潜り込んだ。

<二日目>
雪倉避難小屋の夜は風も無く静かで思ったより暖かであった。夜間小用で外に出ると満天の星が輝いていた。それでも朝の冷気で4時過ぎには起きて、雪倉岳山頂でご来光を拝むことにして5時過ぎには小屋を出た。ヘッドランプを点して歩いたがすぐにその必要はなくなった。昨日の疲労が抜けず空身でもなかなか足が進まず50分もかかって行く倉岳山頂に着いた。丁度日の出の時間でご来光を拝み、開け行く白馬岳や朝日岳の写真を撮ることができた。計画ではこの先に進んで赤男山・朝日岳を踏んで五輪尾根を蓮華温泉に下る予定であったが、今の自分にはとても無理な行動であることが分かったので計画変更はbestな決断であることを知った。避難小屋に戻ってパッキングしていると白馬岳から1時間少々で歩いてきたと云う若者が着替えのために小屋に寄った。「片足貸してくれよ」と冗談を言った。避難小屋を後にして縦走路を10分ほど戻って鉢ヶ岳へに向かう。ハイマツ帯に切れ目に登山道跡らしきが残り、砂礫地にはマニアが歩いた踏み跡も見られ、30分ほどで鉢ヶ岳山頂に着いた。白馬岳・旭岳が眼前に大きく聳え、先ほど登って来た雪倉岳も優しい山容を見せている。山頂で展望を楽しみながら朝食を摂った。
山頂を縦走路に戻って巻道を行く。昨日水の取れた沢は夜間の冷え込みで雪解けが止まり、水は流れていなかった。蓮華鉱山道分岐まで登りかえし、ザレた道を一気に下って行く。ペンキマークがしっかりと付いていて迷うことはないが、ザレ場を下り切ると水の流れる小さな沢を下って行く。そしてゆく整備された道と荒れた道を緩急を繰り返しながら高度を下げて行く。2度ほど大きな沢を合わせ徒渉して下ると蓮華鉱山跡の比丘尼飯場跡などの標識が立つ場所もあった。蓮華鉱山跡らしきはその他には見ることができなかった。うんざりするほどの時間が過ぎてようやく瀬戸川に架かる橋に下って一安心であるが、ここから蓮華温泉までの道がまた修羅場であった。瀬戸川の川岸の崩壊地を慎重に登り、遊歩道に出てカモシカ展望台に来ると「蓮華温泉まで40分」の表示があって、疲れた体に追い討ちをかけられた思いである。モクモクと遊歩道を進んで「兵馬の平」からの道を合わせようやく蓮華温泉に下り着いた。早い足なら鉱山道分岐〜3時間半くらいの道を4時間半もかかってしまい、今の自分の脚力を思い知ったのである。



雪倉岳山頂


夜明けの(←)朝日岳・(→)白馬岳


鉢ヶ岳山頂と鉱山道から見る鉢ヶ岳


白馬岳・旭岳← 鉢ヶ岳山頂から →雪倉岳


蓮華鉱山道を下る


いくつかの沢を合わせて・瀬戸川に下る


小蓮華山 レンゲサン 標 高 2769m 標高ベスト100

山 域

北アルプス
雪倉岳 ユキクラダケ 標 高 2617m 日本二百名山

山 域

朝日岳 アサヒダケ 標 高 2418m 日本三百名山

山 域

登 山 記 録
登山月日 2010年8月13日〜8月15日
登山経路 8月13日
蓮華温泉5:40〜白高地沢8:20〜花園三角点10:15/10:30〜白高地〜栂海新道分岐15:20〜朝日岳14:00/14:10〜朝日小屋14:50(テント泊)
8月14日
朝日小屋7:30〜朝日水平道・朝日岳分岐8:50〜雪倉岳11:40〜雪倉避難小屋12:20(避難小屋泊)
8月15日
雪倉避難小屋7:10〜三国境9:10/9:25〜小蓮華山10:10/10:20〜白馬大池11:40/13:20〜天狗の庭〜蓮華温泉15:40
行動時間 第一日目9時間10分(休憩時間を含む)
第二日目4時間50分(休憩時間を含む)
第三日目8時間30分(休憩時間を含む)
合計22時間30分  (休憩時間を含む)
天  候 第一日目 曇 第二日目 霧雨・強風 第三日目 曇
メンバー 親子二人連れ登山隊 第三日目は結城親娘登山隊と一緒に歩く

情  報

アクセス 蓮華温泉まで舗装道路
トレイル 全コース、よく踏まれた人気のトレイル
水場・トイレ 水場は朝日岳・雪倉岳周辺随所で取れる 白馬大池では小屋前にある
トイレは各小屋及び蓮華温泉登山口で
その他 花の宝庫

山行記

第一日目


蓮華温泉から兵馬の平・白高地沢へ


花園三角点付近の大草原と白高地付近から見る朝日岳


栂海新道分岐と朝日岳山頂


朝日小屋に到着・小屋飯にありつく


朝日小屋の女主人ゆかりさんご自慢の夕食

2010夏、親子二人連れ登山隊の山行である。
早立ちを覚悟して前夜蓮華温泉駐車場に車をつけて車中で酒等飲んだ後、仮眠する。
8年前、日本百名山を終えた後、二百名山・三百名山に目標を変えて、初めて目指した北アルプスの雪倉・朝日岳である。朝食をとらず登山道に入ってシャリバテを起こした苦い思いがあり、今回はしっかりと食事を取り登山道に入った。
瀬戸川鉄橋までは標高を300mほど下げて、白高地沢まで登り返すには3時間近く掛かる。白高地沢には新しい橋が建設中であった。花園三角点まで登れば草原地帯となり展望が開けてきた。振り返れば蓮華温泉は同じ高さであり、今まで歩いてきたが標高はひとつも稼いでいないことに愕然とする。三角点付近の木道で軽食を取りながら休憩する。草原には今が盛りと沢山の花々が見頃を迎えていた。
休憩の後、木道を進むと「青ザク」という標識があり草原の最高部である。「青ザク」を過ぎると、五輪山の山腹を巻く道となり、小さな沢が交って飲料水確保には困らない。再び草原地帯となり木道を行くと、白高地の草原で高山植物が見頃で、ヒオウギアヤメが水辺に咲いている。木道脇にはベンチも設けられていてゆっくりと休憩する。
栂海新道との分岐が吹上のコルである。3年前親不知まで下った思い出が脳裏余よぎる。私は少々疲れ気味であるがムスコはここら辺りからエンジンが掛かりドンドンと先を行き、朝日岳山頂には10分も先着していた。私にとっては3度目の朝日岳である。白馬岳方面も良く見える。
山頂で休憩する間に天候怪しくなって急いで朝日小屋への道に入る。パラパラと来て慌てて雨着をつけるがそれほどのことも無かった。朝日平の小屋には15時前の到着となってテントを張る。ムスコのかっての願いの小屋飯を予約してきたのであわてることは無い。テントの中で軽くビール・酒等飲んで休憩する。17時には小屋の食堂に向かい、小屋飯にありつく。名物女小屋番のゆかりさんの能書きを聞きながら旨い食事にありついたのである。
テントに戻り、寝袋に入るとフライを叩く雨音がして、結局は一晩中雨が降ったりやんだりの朝日小屋の夜となった。

花園三角点付近から朝日岳に咲く花々


第二日目


霧の朝日小屋を発ち朝日水平道を行く


猛烈な風の中雪倉岳山頂に立つ

5時からの小屋の朝食をとり、出発の準備をしていると大粒の雨が降ってきた。一旦支度をしてテントの外に出ていたムスコを呼び寄せ、停滞を覚悟しながら暫し様子見をする。しかし雨は上がり、1時間半遅れの7時半に朝日小屋を発つ。水平道に入り快調に進み、朝日岳分岐には1時間20分の所要時間であった。小桜が原・ツバメ平と何も心配することなく歩き続け、「このままであれば白馬大池まで行けるかな」と思うのであったが、ところがどっこいそんな易しいわけは無かったのである。
雪倉岳の山体に掛かると徐々に風が強くなり、楽しみにしていたお花見どころではなくなる。東側の斜面に入ると風もおだんで、休憩することも出来る。ここら辺りで「今日は雪倉避難小屋までか」と覚悟する。ムスコの足は快調で霧の中後ろを振り返ることなく先に行き始める。そして強風の吹き荒れる稜線に出る。先に行くムスコが心配になり私も休むことなく強風の中登り続けるしかない。
風はいよいよ強くなり耐風姿勢をとっても吹き飛ばされそうになる。今朝白馬山荘を出た登山者と行き交うのもこのあたりであるが、情報交換するにも声掛け合うことも出来ない。それでも何とか雪倉岳山頂に登りつくと、10分ほど先着しムスコが雨合羽のフードで顔を覆って私を待っていてくれた。辛うじて山頂写真をカメラに収めた後が一番酷い状況であった。2人で手を取り合って進むが風で前に進めないのである。2回ほど風に吹き飛ばされ転倒し、ザックカバーははがされ登山帽は風に飛ばされてしまうのであった。それでも何とか踏ん張り、高度を下げてゆくと少しずつ風は弱くなり、霧の中に雪倉避難小屋が現れて一安心するのであった。
小屋の中では朝日小屋を出た登山者が10人ほど避難していた。私達も一隅を確保して濡れた着衣を着替える。そして銀マットとエアーマットを敷いてコーヒーなどを啜り体を温めた。その後も避難小屋に駆け込む登山者が続き、結局20人近い雪倉避難小屋であった。
もともとテント泊の予定であるものはその準備も食事も持参しているが、小屋泊まりの登山者には厳しい避難小屋である。避難者が寝具も食事も無い状態の中では少しは遠慮しながら過ごさざるを得なかった。強風だけの夜も次第に雨交じりになり、小屋を揺すり誰もがまんじりともしない夜を過ごすのであった。


第三日目


雪倉岳避難小屋を立ち、蓮華鉱山道分岐付近で白馬岳が見える


三国境と小蓮華山山頂


白馬大池では1時間半のランチタイム


天狗の庭を下り蓮華温泉へ

昨日最後に小屋にたどり着いた「結城親娘登山隊」と行動を共にすることになった。ふれあいをモットーにするわが「親子二人連れ登山隊」には願っても無いコラボレーションである。
7時過ぎに小屋を出る。小屋前はまだ風が強かったが、直ぐに東斜面の登山道に入ると昨夜の強風など嘘のように静かな道となった。しばらく進み鉢山の雪渓から流れる小沢で水を補給する。そして高度を上げ30分に一回しっかり休憩を取りながら三国境には予定通り2時間で到着した。ここまでくればあとは下るだけ先も読めて一安心だ。三国境では20分ほども休憩した後、小蓮華山に向う。ここら辺りから上昇気流が上がってきて展望が得られなくなって残念である。小蓮華山は山頂付近の崩落が激しく、ロープで立ち入り規制されていた。小蓮華山でも一息入れ、雷鳥坂を下ると雷鳥の出現にツアー登山者が大きな歓声を上げていた。登山道脇の花々を見ながら結城親子と楽しいたびである。私は只一つ不満があった。それは昨日雪倉山頂で登山帽を吹き飛ばされてハゲ頭を露出しながら歩かなければならないことである。
下方に白馬大池が見えてくる。北アルプスでは一番大きな池で山上湖である。ヒゲのチングルマの群生を見ながら白馬大池には正午前の到着となった。結城さんがスパゲッティとラーメンを作ってくれて豪華昼食となった。私達もも久しぶりに行動途中のビールを飲んでご機嫌である。結局1時間半も小屋前のベンチで休憩し、蓮華温泉への下山に掛かる。当初予定では2日目にここにテントを張って、3日目に風吹き大池経由で下るつもりであったが残念である。次の楽しみと言うことだ。(お盆の予定がなければ延長しても良かったが)
天狗の庭などで休憩を挟みながら2時間半ほどかけて蓮華温泉に下った。コースタイムが2時間となっていたが少し早過ぎるのではと感じた。蓮華温泉で結城親子と再会を約してお別れし、私達は蓮華温泉ロッジの内湯に入り、汗を流して車に乗り込んだ。

帰宅後ムスコは母親に「又山友達できたよ」と嬉しそうに自慢するのであった。

 


日本二百名山 雪倉岳 ユキクラダケ 標 高 2617m

山 域

北アルプス
日本三百名山 朝日岳 アサヒダケ 標 高 2418m

山 域

北アルプス
登 山 記 録
登山月日 2002年7月25日〜26日
登山経路 7/25 蓮華温泉7::50〜白高地沢10:40〜花園三角点12:30〜白高地15:20/15:55〜朝日岳16:45/16:55〜朝日小屋17:35
7/26 朝日小屋5:20〜朝日岳分岐6:50〜雪倉岳10:15/10:40〜蓮華鉱山道分岐12:10/12:40〜瀬戸川徒渉点15:50 〜蓮華温泉17:00
行動時間 第1日9時間45分 第2日11時間40分 合計21時間35分(休憩時間含む)
天  候  7/25晴 7/26快晴
メンバー 単独

情  報

アクセス 平岩駅から長い林道を進んで蓮華温泉登山口へ
トレイル 朝日岳へは白高地沢まで一旦下って登り返す 
雪倉岳への縦走路はお花畑の中の路を歩き最後は急登を登る 
蓮華鉱山道はあまり踏まれていない  
瀬戸川徒渉点は増水時は渡れないので注意
水場・トイレ 水場はいたるところで沢水補給できる
その他  

山行記


雪倉岳から(左)白馬岳 (右)朝日岳を望む

平岩駅から長い林道を進んで蓮華温泉には7時過ぎに到着した。どうせ今日は雪倉岳避難小屋か朝日小屋までの6〜7時間コースと思い、ゆっくりした気分で蓮華の森キャンプ場の先にある登山口に向かう。今日はどうしてもテントの中でとまりたいので、キャンプ道具一式を担ぐと20キロは越えてザックが肩に食い込む。
蓮華の森自然歩道をしばらく行くと、白馬岳・雪倉岳への最短道の蓮華鉱山道分岐だ。「どうしようか」としばし逡巡するが、ここは朝日小屋を目指すことにする。分岐からはぬかるんだ悪路をどんどん高度を下げていく、兵馬の平から瀬戸川にかかる鉄橋あたりが一番下がったところであろうか、時計で高度を確認すればなんと300Mも下がったことになる。悪路はさらに続いて白高地沢まで山腹を巻くのであるが、どうも今日は気合の乗りがもうひとつである。白高地沢の川原までは何とかコースタイム通りに歩いてここで休憩を取る。ここからは五輪尾根への取り付きで、樹林の中の本格的な登りになる。ここらあたりから今朝、朝日小屋を出た下山者と続々出会うのであるが、みんな長い縦走を経てきたのだろうか疲労困憊の顔が続く。
先もそんなに遠くはないからゆっくり登ろうと思うのだが、さしたる急坂でもない登りに汗が滴り落ちる。
「ザックが重いせいだろうか」、「最近の仕事の疲れのせいだろうか」と自問自答しながらあえぐのだが、5分も歩くと息が上がってしまう。何とかあえいで五輪尾根まで登ると、そこはすばらしい草原地帯で吹く風が疲れた体に心地よい。それでも花園三角点までは白高地沢からコースタイムに10分遅れくらいの1時間50分でたどり着いた。対岸には蓮華温泉の赤い屋根だ見えて、ちょうど高さが同じくらいに感じられる。「4時間半以上歩いたのにまだ高度を全然稼いでいないのか」と思うとがっくり来るのである。 しかし目指す方角を見やれば、朝日岳が丘のように優しい山容を見せていて、雪倉岳はその左に堂々たる山容を誇っている。「そんなに遠くはないな」と気を取り直した。
ところがどっこい、ここからが地獄の苦しみを味わうのである。草原の尾根道で後続の単独行氏に負い抜かれれ、聞くところによると蓮華温泉は私より30分遅れくらいで出発しているようで、少しあせりがでて来たが、どうしてもも足が前に進まないのである。五輪尾根の巻き道にきても、休憩時間のほうが長く、歩いている時間が短い、完全なスタミナ切れ状態で残雪の白高地に到着した。
花園三角点からの1時間30分のコースタイムを、なんと倍の2時間50分かけてようようにたどり着いたのである。ここにはテントを張る場所もあり、疲労困憊のこの状況ではここで休むのが一番とザックを下ろし、びしょぬれになった衣服を全部脱ぎ捨て、雪渓の清冽な流れで汗をぬぐった。
もうここで休もうと決めた以上、何もすることはないと、担ぎ上げたビールを冷たい水につけて、辺りを見回せば「キャンプは決められた場所以外禁止いたします」という環境庁の看板が抜き去られて、近くに転がっていた。「あーやっぱりここでのキャンプは、ルール違反なんだ」と罪を感じながら、持参したおにぎりと食物を口にした。目指す朝日岳山頂が栂海新道分岐を挟みすぐそこに見える。
どうしようかなと迷いに迷う。明日のことを考えると「今日よりさらに厳しい道だ」と判断し、朝日岳を超えて、朝日小屋までの道を進む決断をする。再度ザックに荷物を入れて担ぎ上げ、歩き始めると、先ほどとは全然違う手ごたえなのである。「アーそうかガス欠だったんだ」。そういえば朝食はろくに摂らずにそのまま登山道に入ってしまったためのスタミナ切れであったことが不調の原因と分かれば納得である。雪渓を2箇所わたって稜線にたどり着けば、そこが栂海新道分岐で、休むこともなく50分間ノンストップで緩やかな朝日岳山頂への道を一気に上りきった。
山頂についたとたんぱらぱらと雨が降り出し、あわてて雨着をつけるも、わずか3分くらいのにわか雨で済んだのは幸いだったが、苦労して登りついた山頂はガスの中で展望ゼロ。山頂写真をとって急いで朝日小屋に下った。お花畑に浮かぶ朝日小屋前のキャンプ場には実に10時間かけて、ガスに包まれ夕闇のように感じる17時半過ぎに到着した。早速テントを張り、担ぎ上げたビールとお酒を飲んで簡単な食事を取れば、もう休むだけで、いつも息子と二人で休んだテントの中で一人さびしく、それでもゆっくり休むことができた。

夜が白み始める4時前には起きだして朝食の準備である。昨日の二の舞はごめんであると、十分に腹ごしらえして、テントを撤収し出発であるが、ここまではどうしても一時間以上の時間が必要で5時20分の出発となった。水分を含んだテントが重く今日も先が思いやられる。
白馬水平道を急ぐが、名前は水平であるが道はきついアップダウンと荒れた登山道で、その上朝露を含んだ周りの草花ににズボンは見る見る間にびしょ濡れになる。残雪の谷を2ヶ所超えて1時間半で縦走路に出る。赤男山を巻く道は小桜が原なるロマンチックな名前が付けられているが、まさになまえどおりハクサンコザクラが真っ盛りで思わず足を止めてカメラに収める。雪倉避難小屋を朝出た縦走者と歓談しながらお花畑に歓声が上がる。
落石地のツバメ平で小休止。いよいよ雪倉岳へののぼりになるのであるが、余り急な道でもないのでゆっくりゆっくり上れば心配ない、と思うもなかなか高度を稼げない。雪倉岳はほとんど岩屑の山である。何回か登山道脇の岩に腰を下ろしながらもくもくと登る。朝日岳が赤男山の向こうに大きく見えるころになると雪倉岳ももうすぐだ。このころになると朝白馬岳を出た縦走者と頻繁にすれ違う。なかには70Lのザックを担いでこ「れから栂海新道縦走よ」なんて猛烈ムスメに度肝を抜かされる。
最後の力を絞って10時10分に山頂を踏むことができた。白馬岳が鉢が岳・三国境の向こうにデーンと聳えていて大感激。もうなんとも形容のできない景色である

先の行程も気になり、30分の滞頂で縦走を再開。
雪倉岳避難小屋、雪渓の水場と急ぐ。鉢が岳を巻くころすれ違う登山者に声かけると、蓮華鉱山道を登って来たと言う。実はここまで鉱山道を下ろうとは思っていたが、情報がはっきりしないので迷っていたのである。、これで安心、時間がかかっても予定通り蓮華温泉に帰れそうで一安心である。鉢のコルから少し登ると鉱山道の分岐に来て昼食をとる。
また一人この道を登ってきたものにあって、さらに情報が得られて安心である。
休憩の後、疲れた体に鞭打ちながら鉢が岳の山ろくを一気に下り、2箇所の雪渓を慎重に渡り、シナノキンバイが満開のお花畑をゆっくり鑑賞しながら長い樹林の中を歩いて、最後の難所瀬戸川を徒渉し(後述)蓮華自然歩道を30分かけて駐車場に戻ると、今日も12時間の長丁場を無事踏破して疲労困憊の朝日・雪倉岳縦走を締めくくったのである。

  
ハクサンコザクラが花開く小桜が原を朝日岳目指して女性縦走者は行く

瀬戸川の徒渉(イチモツ君の受難)
雪倉岳を登った後,鉢が岳をトラバースして蓮華鉱山道を下り蓮華温泉に戻ったわけであるが,最初はこの道を登路に使い最短距離で雪倉岳を目指そうとしたのである。しかしガイド本を見ても詳しい記載がないため不安になり、上述の通りの朝日岳経由にしたのである。これが幸いしたかどうかはわからないが、とにかく予定通り2日間で雪倉岳・朝日岳を登ることができた。
この鉱山道を下る前に二人の登山者が今日、この道を登り情報を得ることができたことが一番の幸いであった。鉢が岳のコルを過ぎて鉱山道に入ったのであるが、ペンキマークも鮮やかで、先の不安など一つも感じないし、登山道脇のお花畑はミヤマキンロバイの真っ盛りで、私には名前も知らないその他の花で埋め尽くされていた。2度の雪渓をわたる辺りまでは急坂もあって緊張するところもあるが、コースの半分も過ぎるあたりから緩やかな広い鉱山跡への登山道となり単調な樹林の中の時間が続く。
蓮華温泉に近づいたかなと思う川の瀬音が大きくなって、やがて瀬戸川の川原おりつくことができた。見渡すと川原の石にペンキマークがついて徒渉をしなければならないようである。しかし川の流れを見ると半分はひざ下くらいの流れであるが後の3Mばかりは雪解け水を集めた激流が渦巻いている。川原を見渡しながら、さてどうしたものかと思案しながら一番良い徒渉地点はと探してみると、激流の上に流れ着いた流木がちょうど橋のようになっているところがある。そこを渡ろうと決めたのであるが、その流木は電信柱くらいの太さである。それに乗って歩くほど身が軽いわけではない。抱きついて渡るしかないなと決めていよいよ激流の徒渉開始である。
登山靴を脱ぎ靴下は足の防護のためにはいたままにして、20キロのザックをしっかり体に固定して清流に足を入れると、冷たさに飛び上がらんばかりである。我慢して進めば激流にかかる流木の端っこに手が届く、持っていたステッキを対岸に放り投げて流木に足をかけしがみつく、激流のしぶき浴びて、濡れた電柱くらいの太さの丸木である手を滑らせて落ちたら一巻の終りだと思うと全身がこわばる、顔にしぶきを浴びながら木に止まった芋虫のように手と足を交互にずらせながら前進する。下半身側をずらすときの支点は当然へそから舌のイチモツ君のところになり、体重プラス20キロの荷重を受けてイチモツ君がうなり声を上げる、
へこたれたら激流のモクズと思えば、イチモツ君も生涯一番の奮闘で何とか対岸に着くことができた。対岸に着くと頭が先なので姿勢の取りようがない、何とか岩場に手をかけて少しずつ体重を移動をして体を起こすのであるが、これがまたイチモツ君に負担倍増となるのだ。何とか渡り終え、肩で息をしながら呼吸を整え落ち着くのを待つと負担をかけたイチモツ君が泣き出すのである。
だれもいない川原でズボンをずり下げて、愛しのイチモツを眺むれば、普段でも人に自慢ができるほどのものでもないが、痛さにさらに縮み上がっている。
瀬戸川の清流の水を手にすくい、しっかりと冷やして慰めてやるのであった。
これが60歳に近いジジイの様かなと思うのであるが、こんな楽しみと苦しみの思いがこの「瀬戸川の徒渉」であった

 

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