山行記
北海道ではいつもお世話になる「ほろしり氏」を立山・剱岳に案内した。
4回目の立山・室堂入りであるが、今回始めて富山県側からの入山となった。
立山駅始発のケーブルカーに乗り美女平に着く。標高差500mを7分で登る。美女平からは高原バスで23キロの道を50分で室堂に到着した。北アルプスは初めてと言うほろしり氏も立山連峰を目の当たりにして少々興奮気味である。
石畳風に整備さえた登山道を歩いて一の越につく。ここまで50分、アイドリングにしてはちょうど良い時間である。雄山への登りは富士山の一合目分を登る感じである。ここも1時間で一等三角点の設置された雄山に立つ。三角点は3003mの山頂ではなく2991m地点に設置されていて、これは新しい発見であった。山頂には雄山神社休憩所があり、小学生の集団登山が昨夜ここに泊まったらしく、ちょうど下山を始めるところであった。雄山神社神殿が3003mの山頂であるがここを踏むには500円の初穂料が必要である。6年前に登ったことのある、ここはパスして立山の最高峰・大汝山に向かい、ここで昼食を取りながら休憩する。眼下には黒四ダムを望むことが出来るが、後立山連峰の山々はその峰を雲が隠していて、少し残念である。
休憩の後、立山連峰を別山まで縦走する。別山に立つと憧れの剱岳が目に飛び込んできた。絶好の天気で黒光りした岩の殿堂・剱岳の雄姿にほろしり氏も私もただただ見とれるばかりである。しばし剱岳の展望を楽しんだ後、別山乗越に回り、剣沢小屋を目指して急坂を下る。剣沢キャンプ場には7張くらいのテントも見えるが、今日は久しぶりの小屋泊である。一人一枚の布団でゆっくり休むことが出来た。
翌朝、4時前には起きて朝食の準備をし、ほろしり氏と二人しっかりと朝食をとる。まだ夜が明けないのに宿泊者が次々と剱岳目指して小屋を出て行く。私たちも5時前には小屋を立つことが出来た。
今日は昨日、立山を付かず離れずに歩いた大阪のK氏も一緒に剱岳を目指す。
懐中電灯の灯りで剣沢の川原にペンキマークを拾いながら進む。30分ほど歩くとようやく夜も明けて懐中電灯はいらなくなり、建て替え中の剣山荘に着く。ここで少し休憩し、いよいよ剱岳への登山道に入る。私は3度目の剱岳であって、初めての二人の先導を果たさなければならない。慎重に道を選びながら一服剣へ。ここまではまだまだ序章である。
前剣への登山道は、傾斜も増して更に慎重になる。巨岩の下には初めての鎖場も現れる。前剣では先行した団体さんが休憩する間に先を行くことが出来た。何しろ難関・カニのタテバイで順番待ちさせられたら、叶わないのである。前剣から平蔵のコルまでは緊張する鎖場が二箇所あり、タテバイを前に良いトレーニングになる。平蔵のコルで一息入れて、カニのタテバイに取り付く。団体さんの指導員がザイルを準備していた。私は一声かけて、ボルトに手を掛け、鎖をしっかりと握って、一気に駆け上がる。何回来ても緊張で心臓が踊るところである。途中一回息を入れて指導員を見上げる。そして又一息でトラバースできる岩場の割れ目まで登りきり、5mほどトラバースして安全な岩陰に身を寄せる。そして後続のほろしり氏・K氏が続くのをカメラに収める。二人とも一番の難所を越えて興奮冷めやらぬ面持ちである。
しばし息を入れた後、下りの難所カニのヨコバイを見ながら山頂への道に進む。剣山荘を立つころには良く晴れていた山頂も、上昇気流で上がってきたガスに巻かれ、残念ながら展望は得られなくなっていた。岩稜の山頂稜線を慎重に登り、祠の立つ剱岳山頂には8時ジャストの到着となった。3人で登頂を祝い、がっちり握手をする。そしてガスが晴れるのを待つ。
軽食を取ったり、カメラに収めたりと一時間ほど滞頂するが、なかなか晴れないガスに痺れを切らし9時には山頂を後にする。
山頂直下では、前剣で追い越した団体さんが、三人一組となってザイルを腰につけて指導員に付き添われながら登ってきた。山頂から10分も下ると、下りの難関・カニのヨコバイである。ここは最初の一歩が侮れないところであるが、しっかりと鎖に掴まれば、それほどの恐怖感もなく両足を岩の割れ目に下ろすことが出来る。後は横ずさりしながら突破することが出来た。ここでも後続の二人をしっかりとカメラに収める。更に長い梯子を下って小さな避難小屋のある、平蔵のコルの上部に下る。その後も鎖場を慎重に、平蔵のコルと前剣の間にある平場に下る。ここはちょうど良い休憩ポイントになっている。ここに来てガスも完全意に晴れて、剱岳周辺全体が見渡せるようになった。山頂もすぐそこに見える。早月尾根を下る登山者の姿も見える。ここでも10分ほど休憩し、再び下山を始める。
前剣は巻き道に回り、パスして急傾斜の岩場を一服剣まで下る。ここで最後の休憩を取り、15分ほどでザックをデポしておいた剣山荘に下ったのである。
剣沢小屋に戻るK氏とはここで別れ、ほろしり氏と二人剣御前への道に進む。緊張して登った脚も、ここに来て疲れを覚え、余り前には進まなくなるのであった。雪渓や残雪の消えた川原を横切りながら、剣山荘から1時間半かけて剣御前小屋前に到着した。ここで昼食を取る。そして雷鳥坂のくだりに入る。雷鳥平のキャンプ場で休憩の後、地獄谷の噴気を見ながらみくりが池に回り、室堂に到着した。
高原バスもケーブルカーもほとんど待つこともなく、立山駅には16時の帰着となった。
|