三俣蓮華岳から槍ヶ岳

(双六岳・樅沢岳から西鎌尾根越えて5年ぶりの槍ヶ岳へ)

日本三百名山 三俣蓮華岳 ミツマタレンゲダケ 標 高 2841m

山 域

北アルプス
登 山 記 録
登山月日 2003年9月26日
登山経路 新穂高6:00〜ワサビ平小屋7:20/7:45〜秩父沢9:00〜鏡平11:10/11:20〜弓折岳分岐12:20〜双六小屋13:20/13:35〜中道分岐〜稜線14:20〜三俣蓮華岳15:10/15:30〜双六岳16:30〜双六小屋17:20
行動時間 登り9時間10分 下り1時間50分(双六小屋まで) 合計11時間20分(休憩時間含む)
天  候
メンバー 単独

情  報

アクセス 新穂高登山口までは問題なし
トレイル 新穂高登山口からロングラン
水場・トイレ 水場は各所にある トイレは途中の山小屋
その他  
山行記


三俣蓮華岳〜水晶岳・鷲羽岳を望む

北アルプス最深部にある三俣蓮華岳は4年前にムスコと二人感動の裏銀座縦走の際、三俣山荘から巻き道を通って双六小屋まで歩いたので山頂は踏んでいない。
踏み忘れた信州百名山・日本三百名山を新穂高から双六小屋経由で目指す。せっかく日本アルプスの最深部まで行くのであるから安易なピストンだけで終わらせるのは勿体ないし、天気も良さそうなので西鎌尾根を超えて槍ヶ岳を踏み、あわよくば大キレットを越えて上高地までの縦走をもくろんだのである。
小屋泊まりの支度に昼食用んの自炊セットを担ぐ、せっかくなら食料も持参しようと貧乏根性が頭をもたげる。結局3日分の食料を入れると15キロを超える荷物になってしまった。これが最後は命取りになるのである。
新穂高の駐車場には早朝5時過ぎに到着した。駐車場が分からずウロウロするが、それでも6時前には駐車場を出発することが出来た。
バスターミナルのトイレでしっかり準備をし、気を引き締めて、蒲田川に沿った左俣林道をぐんぐんと進む。
笠新道入口にくると笠ヶ岳に向かう単独行者が気合いを入れて登って行った。そこから僅かな距離のワサビ平小屋につき、朝食をしっかりとる。最近の登山はシャリばてすることが多いので、時間を掛けておにぎり3個をしっかりとる。
小屋から少し歩くと、いよいよ小池新道の登山道に入った。川原の巨石を縫うように進んで秩父沢の橋に掛かる頃には汗が滴り落ちてくる。今日は天気も良くなりそうであるが朝靄が掛かっていて湿気が多い。
後は只黙々と樹林帯の中を歩くのであるが、平均勾配で良く整備された快適な登山道である。30分おきに小休止をはさみ、イタドリガ原・シシウドガハラなどを歩いて、11時過ぎに雲の切れ間に槍ヶ岳が望まれる鏡平小屋に到着した。先着していた者、下ってくる者が何人か休憩をとって槍ヶ岳が姿を現すのを待っていた。まだまだ先の長い行程の私はゆっくりしているわけには行かないのである。
弓折岳・笠ヶ岳方面への分岐の稜線までは、少し急坂となるが一気に上る。荷物を下ろす双六小屋までは後僅かだと安堵するが、ここから小屋まで、まだまだたっぷり距離もあり時間も掛かるのである。小さなアップダウンを繰り返し、雪田跡・湿原などを歩いて、よれよれになりながら双六小屋には13時半に到着した。今日はここで宿泊予定であるがここが終点ではない。これから往復4時間は掛かる三俣蓮華を踏んでこなければ次の予定が立たないのである。
小屋の受付に、双六岳を登ってから申し込みをする旨話して、ディパックにカメラと少しの食料・水を詰め込んで双六岳を目指す。本当は三俣蓮華岳を目指すのであるが「この時間からは無理だ」と言われるのが怖かった。小屋からいきなりの急登を登ると三俣蓮華岳への巻き道分岐に着く。分岐から更に少し登ると双六岳登山道と中道分岐に出る。ここまでくると三俣蓮華岳も鷲羽岳も間近に見えてきた。双六岳をあきらめて中道を通って稜線に出る、ようやく先も見えてほっとする。
稜線を双六丸山を超えて50分、三俣蓮華岳山頂には15時10分の到着であった。
西に傾いた日の光を浴びて鷲羽岳、水晶岳が目の前に輝いている。
若者が一人カメラを構えてシャッターを押している。双六小屋から殆ど休憩なしで飛ばしてきたせいか、なかなか息が整わない。それでも帰りの時間も読めて、明るい内には双六小屋に帰り着くことが出来ると思うと、気も落ち着くというもので、信州百名山99座目登頂の余韻をしっかり楽しむのであった。
20分ほどの滞頂のあと同じ道を戻る。途中、中道分岐に戻って双六岳を目指す。15分ほどで双六岳山頂を踏む。槍ヶ岳が目の前に見えるであろうが今日は雲の中である。
山頂写真だけ撮って小屋に向かう途中、くすんだ色合いのライチョウのつがいと遭遇する。ライチョウに気づかずに歩いていると雄のライチョウが私の足元を走った。雌を守るための威嚇行動である。しっかりカメラに収める。急坂を下って小屋には17時20分到着し、素泊まりの手続きをする。
夕飯は若者2人と自炊し、山自慢に花を咲かせながらくつろいだ。
19時には小屋の布団に潜り込み、疲れた体を休ませることが出来た。然しオーバーワークによる興奮状態が続きなかなか寝付かれない夜を過ごした。

 
双六岳のライチョウ

 


日本百名山 槍ヶ岳 ヤリガタケ 標 高 3180m

山 域

北アルプス
登 山 記 録
登山月日 2003年9月27日
登山経路 9.27 双六小屋6:15〜樅沢岳6:50〜硫黄乗越〜左俣岳〜千丈沢乗越9:45〜槍ヶ岳山荘11:15/11:35〜槍ヶ岳山頂11:50/12:10〜槍ヶ岳山荘12:20/13:05〜槍平小屋15:40 
9.28 槍平小屋7:00〜白出沢8:50〜穂高平小屋9:25・9:40〜新穂高10:35
行動時間 登り5時間30分(双六小屋から) 下り2時間45分(槍平小屋まで) 合計(9時間25分休憩時間含む)
槍平小屋から新穂高まで3時間35分
天  候
メンバー 単独

情  報

アクセス 新穂高温泉から双六小屋経由
トレイル 西鎌尾根
水場・トイレ 双六小屋で補給のこと トイレ無し
その他  
山行記


西鎌尾根から見る秋色の北アルプス最深部

山小屋の布団の中はさすがに快適である。昨日の疲れもしっかりと取れて快適な朝を迎えた。外は覗くまでもない、今日は絶好の秋晴れのもとであることが体で実感する。
薄明るくなったばかりの自炊場で簡単ではあるがボリュームのある朝食を作り、腹ごしらえをする。
支度を整え、小屋番に挨拶を済ませて外に出ると、抜けるような青空の北アルプスの主稜線である。
小屋の前では10人ほどの団体が槍ヶ岳目指してミーティング中である。聞くとはなしに耳を傾けリーダーの注意事項をチェックし、まずは目の前のも三沢だけを目指す。アイドリングには少しきつい登りを30分ほど歩くと樅沢岳山頂に到着した。笠ヶ岳が弓岳・抜戸岳の稜線の先にきれいな三角錐の姿を見せて朝日に輝いている。後方には、昨日登った三俣蓮華岳・鷲羽岳・水晶岳・そして薬師岳の峰峰が勢揃いしていて感動が一気に高まる。前方は左から延びる赤い硫黄尾根の先に北鎌尾根と南岳に延びる稜線を従えた槍ヶ岳が逆光の中に黒々と天を突いている。しかしそこまでの道はまだまだ遠く先である。まさにここは北アルプスのど真ん中、天下一品の好展望台で満足感が広がる。後続の単独行者と写真を撮り合う。
次の目標は硫黄尾根乗越である。前後左右何処を見ても人の匂いを感じない大自然の中の稜線漫歩を堪能する。赤い山肌の硫黄尾根のとりつきは広い大地になっていてテント場と見間違うばかりである。
左俣岳を越えて、ここでザックを下ろし休憩をとる。丁度槍ヶ岳への中間点くらいになるであろうか。槍ヶ岳から下ってくる登山者とすれ違う。
更に稜線漫歩を楽しみながら進むと、登山道は徐々に険しさを増してきてガレ場を越えるようになる。いくつかの小さな岩稜を越え、そして巻きながらようやく槍ヶ岳の直下である千丈沢乗越に着いた。槍ヶ岳の穂先が小槍を抱えて随分と小さく見える。しばらくは岩稜の尾根に切られた道を進み高度を上げてゆく。振り返ると歩いてきた西鎌尾根の全容が見渡せる。そして下から少しずつ上がってきたガスの上に北アルプス最深部の山々が見渡せ、ガスに隠れる前にカメラに納める。飛騨沢側を見ると槍平から槍ヶ岳に続く道が良く見えるがこの時間まだそこを登ってくるものが見えない。
モレーンの登りに掛かると足下が崩れやすく、歩きにくい登山道となり、慎重に登らなければならない。おまけにザックの重さが肩に食い込み始める。千丈沢乗越から2時間のコースタイムであるがなかなか足が進まない。歩いている時間よりも息を整える時間のほうが長くなるようになり、あえぎを繰り返しようやく11時15分槍ヶ岳の肩に立つ槍ヶ岳山荘に到着した。
テラスに立ち反対側の槍沢を覗く、「何処からきても簡単には着かないナー」と独り言。
息を整えてカメラと水を持って山頂を目指す。この時間帯は空白の時間であろうか、槍の穂先を目指すものはわずかだ。5年ぶりの登頂に心が躍る。しかし、空身になっても心臓が踊り立ちくらみがして何度か立ち止まる。随分と疲れが来ているようだ。水分を補給し、息を整えながら最後のはしごを慎重に登ってとうとう槍ヶ岳の山頂に立つ。
ここはもう何も言うことはない感激なのである。5年前に息子と来たことを思いながら静かに感涙に咽ぶ。そしていつかは歩いてみたいと思う北鎌尾根を見やりながら静かに闘志を燃やす。
肩の小屋に下り、次の目標である南岳を目指そうとするが、大キレットを超えての行動は疲れた体には危険と感じ、槍平に下ることを決断する。
小屋の食堂で昼食をとり、飛騨乗越から飛騨沢を下り長い槍平の小屋をめざした。

 
槍ヶ岳山頂と北鎌尾根

 

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