南アルプス深南部の山(大無間山)

日本二百名山 大無間山 ダイムゲンヤマ 標 高 2329m

山 域

南アルプス深南部
登 山 記 録
登山月日 2003年6月6日
登山経路 田代4:00〜小無間小屋6:45/7:00〜P27:30〜小無間山9:05/9:15〜中無間山10:00〜大無間山11:20/12:15〜小無間山14:10〜小無間小屋15:55〜登山口17:40
行動時間 登り7時間20分 下り5時間25分 合計13時間40分(休憩時間含む)
天  候
メンバー 単独

情  報

アクセス 大無間山の登山口田代までは国道を走る
トレイル 急坂・アップダウンと登山道のエッセンスを詰めたトレイルが続く
水場・トイレ 水場無し トイレは小無間小屋
その他  
山行記


唐松谷の頭から見る大無間山

 
大無間山頂と苔むす山頂縦走路

梅ヶ島の西日陰沢から山伏を登った後、急いで井川に向かう。1時間も有れば登山口の田代に着くだろうと思ったのが間違いであった。安倍川を下り、富士見峠を越えて井川湖を見下ろしながら走ること3時間。大無間山の登山口、田代に着くと午後4時近くになっていて、これから小無間小屋まで登るのは無理と判断する。
それにしても、ここ井川の秘境ぶりは目を見張るばかりである。井川ダム建設によりどんなドラマがあったのか伺い知ることは出来ない。

登山口〜小無間小屋まで (所要時間2時間45分)
テシャマングの里で休み、夜の明ける前、ザックに水3Lと有るだけの食料を詰めて4時に出発する。不審者の通過に、家々の犬が一斉に吠えだす。諏訪神社の鳥居をくぐって境内を10分も歩くと林道を横切って登山道入口があった。少し白み掛けるが桧林の中ははまだヘッドランプの明かりが頼りだ。熊よけに携帯ラジオのボリュームを上げる。歩き始めて20分もすると後ろから人が来てびっくりする。運動靴を履いた同年輩氏である。「荷が軽いから」と言いながらあっという間に追い越していった。更に10分後には地下足袋を履いた地元の登山者が「今日は天気がよいから2年ぶりだ」とこれも又、軽快に急坂を登っていった。少し後を付けてみるが、とても私のペースではない。「長丁場ですから、ゆっくり行きます」と声をかけるが届いたかどうか。
桧林を過ぎて雑木林に掛かると、いよいよ急登となる。木の間越に日が射し込んできて、汗がしたたり落ちる。1時間半近くもがいて、稜線に飛び出すと小無間小屋が建っていた。「昨日の内にここまで着ていれば楽だったのに」と悔やむが後の祭りである。
小屋の前に腰を下ろして朝食を摂りながら15分ほど休憩する。

小無間小屋〜小無間山(所要時間2時間15分)
小屋からはすぐ下りとなり、これから小無間山までは四つの岩峰を越えていかなければならない。稜線の彼方に目をやれば大無間山らしき山容が見える。随分と遠くに見えて「あれが大無間山なら、本当にここから日帰りできるのだろうか」と不安な気持ちになる。一番のアップダウンはP3を下りP2への登りである。その高低差は80mくらいはある。
どの岩峰もしっかりした登路が付いていて危険なところはない。ギザギザの岩場の連続する鋸歯を越えてPTに立てば、小無間山が衝立てのように聳えている。
最後の鞍部に下り、ガレ場を右に見て小無間山に挑戦だ。いつも思うのだが急坂に見えても、登り始めてみると、思った程というか、見た目程というか、その割でないことが分かる。
何回か息をいれながら最後は緩くなった登山道を登って小無間山に到着した。
ここでもザックをおろして一息入れる。

小無間山〜大無間山 (所要時間2時間05分)
大無間山までの縦走路は今まで歩いてきた登山道とは様相がガラリと変わる。鬱蒼としたシラビソやダケカンバ等の原生林の中、びっしりと苔が密生した中のトレイルである。
森林限界を超えた明るい尾根道に咲く高山植物も見事であるが、しっとりとした「苔むす登山道」も落ち着いて良い物である。唐松谷の頭の崩壊地の縁にくると大無間山が目の前に見えてきた。ガイドブックの定番のカメラアングルであるがここでカメラに収める。
縦走路の小突起、中無間山付近は倒木も激しく登山道を塞ぐ。
大無間山への最後の登りに掛かると先行した運動靴氏と会う。山頂を踏んで昼食も取って下山するところである。推測すると、私よりは1時間半くらい早く登り切ったようで、足の速いことがうらやましい。立ち話で山談義を交わす。私のこのページはネットで見たことがあるそうで、拙さを恥じるばかりであった。
更に5分ほどすると今度は地下足袋氏が下ってきた。地下足袋氏、必死に運動靴氏を追うが、どうやら運動靴氏の方が早そうである。速さを競うのも結構だが、私には縁のないことである。
小灌木の山頂直下に掛かると南アルプス南部の眺望が開けてきた。上河内岳から池口岳までが同定できる、その他は山名が分からない。山頂手前には昭和40年ここで遭難した故坂本義一氏の慰霊塔が建っていた。生きていれば私と同じ年齢の22歳の早すぎる遭難であったようだ。緩いトレイルを登り切って樹林の中の一等三角点大無間山を踏んだ。
夜の明けきらない4時に登りはじめて、7時間半後であった。苦労して登り着いた山は感激も大きい。帰りの長丁場も考えるとゆっくりもしていられないが、1時間は滞頂する事にして昼食をとる。
先行した二人以外に今日ここに来たのは私だけである。先週の笊が岳に続いて難関を征服したことが本当にうれしく満足感が漂う。

山を下る(所要時間5時間25分)
登りの疲れが出てなかなか足が伸びない。然しそれが丁度良いシャッターチャンスや観察の時間になる。登るときは見えなかった自然の営みをじっくり観察できる。それにしても見事な苔である。南アルプスが森の山脈と言われる所以がよく分かる。
小無間山には登りと同じ2時間を費やす。
岩峰越えは気合いを入れ直して歩き1時間半で突破する。
小無間小屋には人が入ったのであろうかしっかり閉められてあった。疲れもピークに達し小屋からの下りは膝と筋肉が悲鳴を上げる。それでも何とかこらえて17時40分登山口の諏訪神社鳥居前に帰り着いた。実に14時間の大無間山中彷徨の1日であった。
車道を歩きながら今のぼってきた山を見上げるのであったが、その一部しか姿を見せない山を仰ぎ「でっかい山が終わったなー」と感慨ひとしおであった。

 

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