南アルプス白峰南嶺(奈良田〜大門沢〜伝付峠〜田代)

広河内岳 ヒロコウチダケ 標 高 2895m 標高順35位

山 域

南アルプス
大籠岳 オオコモリダケ 標 高 2767m 標高順74位

山 域

南アルプス
笹山 ササヤマ 標 高 2733m 標高順83位

山 域

南アルプス
登 山 記 録
登山月日 2006年9月20日〜9月22日
登山経路 9月20日
奈良田11:20〜奈良田発電所11:50〜登山ポスト〜大門沢小屋15:00
9月21日
大門沢小屋5:40〜大門沢との合流地点6:35/6;40〜大門沢下降点9:15/9:30〜広河内岳10:00/10:10〜大籠岳11:40/12:10〜白河内岳13:00〜笹山北峰14:25/14:40〜笹山南峰14:50/15:20〜2550mテント場15:50
9月22日
テント場6:20〜白剥山7:25/7:30〜奈良田越8:00/8:10〜伝付峠10:20/10:30〜保利沢小屋11:55/12:00〜田代発電所13:30/13:35〜田代バス停14:50/15:55〜バス〜奈良田16:20
行動時間 1日目3時間40分 2日目10時間10分 3日目8時間30分(バス停まで)
合計22時間20分(休憩時間を含む)
天  候 1日目晴 2日目晴 3日目曇
メンバー 単独

情  報

アクセス 奈良田湖の上に大きな駐車場がある 下山口の田代発電所まで車入れる
トレイル 大門沢小屋までは緩いトレイル 稜線直下は急坂だがよく整備されている 稜線は広河内〜白河内岳は岩稜・岩礫の中にペンキケルンを拾う その先はハイマツ・低潅木・樹林帯に赤布を追う
水場・トイレ 大門沢小屋上部にも沢水取れる トイレは小屋に
その他 念願の白峰南嶺縦走果たす

山行記

昨年、同時期に同じコースを歩き白峰南嶺にある標高ベスト百に数えられる3座をゲットしようと思ったのであるが、台風の影響による天候悪化で広河内岳山頂で縦走をあきらめた苦い思いの残る山の再チャレンジである。

第1日目
奈良田から北岳登山口・広河原に通ずる林道が路肩決壊により通行止めとなっていて、今年は早川町方面からの広河原への入り込みは出来なかったようだ。登山基地と知られた町としては寂しい登山シーズンを送ったものと思う。
奈良田湖から奈良田第一発電所までの道路はダンプやトラミキ等の工事車両がひっきりなしに走っていて、災害復旧工事も竣工間近なのだろうかと思う。発電所の先、慶運トンネルから先が通行規制されていて、ここに警備員が立っていた。広河内への道の分岐に仮の登山ポストがあり、警備員が記入を求めている。登山届けに記入しながら情報を求める。今日、先行したのは2グループ3人であるようだが、秋も深まったこの時期登山者は少ないようだ。ましてや平日である。しかし私は天気予報をを見ながら、3日間絶対晴れることを確認してきたので単独行であっても心配はしていないのである。幕営用具一式入ったザックは肩に重いのであるが、気合を入れて登山道に入る。
昨年歩いた道であり、気持ちに余裕を持って、1日の行程を歩き15時には大門沢の小屋に着くことが出来た。昨年は小屋泊まりであったが、今年はテントを張ることにする。私のほかには2組の若者グループがテントを張っていた。小屋泊まりは私よりは年寄りの1名だけであった。大門沢の瀬音が少し耳障りではあるが風もなく静かな夜を過ごすことが出来た。

第2日目
今日も天気に心配はひとつもない。隣の若い男女パーティと時を同じくしてテント場を発つ。昨年最後の水場を確認してあるのでそこまでは水を担ぐ必要なく、1時間ほどでその水場・大門沢合流地点に着く。ここで4リットルの水を確保して、ぐっと重くなったザックを担いでシラビソ林の急坂に入る。このコースの一番の修羅場である。
昨年登りきった実績もあり、更に気合が入っている。25分歩いて高度150mを稼ぎ、5分間の休憩をとるというパターンを4回続けると樹林帯を抜けて潅木帯に出た。さすがにここから先は足も重くなり、連続歩行も25分間は続かなくなる。何回かザックを岩に預けながら休憩を取り高度を稼ぐ。朝,農鳥小屋を発った下山者と会うのもこの辺りである。
上空は雲ひとつないが、沢筋からガスが上昇してくる。早く稜線に登りたいなーと気が気ではない。
小屋から3時間半後に稜線に登りつく。昨年とほぼ同じペースで登りきって少し満足だ。農鳥岳方面が輝いている。これから向かう広河内岳方面もしっかりと見えているのである。しかしその視界の中には登山者は一人も見えない。覚悟はしてきたとはいえこの長丁場を縦走するには少しの気の緩みも許されないことを自覚し、ナーバスになってはいけないと身が引き締まるのであった。
稜線分岐から広河内岳への道は2回ほどアップダウンを乗り越える。塩見岳や仙塩尾根の展望が開けてきて感激だ。後方の農鳥岳も素晴らしい景色を見せている。そして広河内岳山頂からはまさに鯨の背のような巨大な白峰南嶺が横たわって見える。
広河内岳で少し休憩の後、縦走路に入る。しばらくは広河内岳を下るが、その後は小さなアップダウンを繰り返しながら岩稜・岩礫の中、黄色のペンキマークとケルンを追う。今日は天気が良いのでまず間違うことはないが、ガスに巻かれたら慎重にならざるを得ないと思う。
大門沢の急坂を頑張りすぎたせいか、縦走路に入って背中のザックが随分と重く感じる。小休止を取りながら稜線の突起としか思えない三等三角点が設置された大籠岳山頂に着く。そして昼食をとる。
塩見岳が対岸に聳えている。歩いてきた稜線の先には広河内岳・農鳥岳が遠くになった。目的地の笹山までの時間も読めれば一人しかいない白峰南嶺であっても先を急ぐ必要はない。計画通りの所要時間を計画通り歩くのが一番肉体的にも精神的にも疲労が少ないことだと思う。そして又稜線を行く。
岩稜の稜線の終点は白河内岳である。山頂を特定できるようなものはないが、縦走路が大きく高度を落としハイマツ帯をケルンと赤布を追いながら進むと笹山との鞍部に下る。ここにはテント場もあった。ハイマツ帯の中、藪漕ぎ状態で進みシラビソの幼木帯に入ると少し高度を上げると笹山北峰に到着した。別名、黒河内岳の語源が理解できたのである。北峰からは農鳥岳が遥か遠くになっていた。
山梨百名山の標識が立つ笹山南峰は北峰から樹林帯を10分程のところである。南峰は樹林が大きき切り開かれているが展望は開けてはいない。テントを張れる場所が沢山あって、最近隠れた人気の山でツアー登山もあるということを窺い知ることが出来た。しかし今日はここにテントを張ることなく30分ほど稜線を下った、2550m地点の蝙蝠岳を目の前にする稜線にテントを張る。
誰もいない一人だけの一晩も、また私にとっては貴重な体験であった。

第3日目
稜線に張ったせいか、夜明け前に少し風が出てテントを揺らす。しかしそれほど気になることもなく、明るくなるまでシュラフの中で休むことが出来た。お餅の入った味噌汁を啜って朝食をとり、素早くテントを撤収する。今年も何回もテン泊したので随分と行動も早くなった。
予想したほど天気は良くはなく、塩見岳や悪沢岳方面は高曇りの空の下に黒々と聳えている。今日は樹林帯の中を歩くのだから雨さえ降らなければ良いのである。
苔むしたシラビソ林をぐんぐん高度を下げながら進む。最初のポイント白剥山には1時間で到着し、更に樹林帯を下り、峰林道(跡)が延びる奈良田越には8時丁度に下りついた。奈良田へ直接下る道への案内もあり、赤布も見えれば少し躊躇するが、結局計画通り、伝付峠まで林道を歩くことにする。林道と言っても廃道になって大分時間がたったのだろうか実生の樹木が道を塞ぎ始めている。しかし崩壊地は荒れるに任せてあるので痛々しいほどの自然破壊である。こういう状態を放置して自然保護を唱える林野庁や森林管理署の気が知れないと言うところである。建設に見合った物を得たのであろうか、残ったのは自然破壊だけではなんともやるせない。林道と言えどもアップダウンがきつく、下りばかりだろうと思っていた伝付峠へは結構登りもあって気が抜けないのであって、奈良田越からは2時間10分もかかってしまった。
林道途中で私の歩いた道を反対に縦走するという男女3人パーティーと遭遇し、情報交換する。後続があるのかなと思ったが、結局大門沢下降点からこのパーティー以外には誰とも逢うことがなかった。伝付峠から静岡県側の二軒小屋への道を分けて、山梨県側の新倉方面へ入る。5分もすると水場に出る。先ほどのパーティはここで昨夜テントを張ったのだろうかと推測する。樹林帯の中、ジグザグきったよく整備された登山道を内河内の沢床まで下る。原始林はここら辺りまで伐採されて、ワイヤーロープの残骸も見えるカラマツ林となっていた。沢沿いの道を少し下ると東電保利沢小屋に着く。ここは田代発電所の取水堰堤のゲート管理の小屋であって宿泊施設ではない。更に内河内の渓谷美を見ながら渓谷の岩場に付けられた朽ちた桟橋を慎重に越えてゆく。1年中、日が差すことのない渓谷であろうか神秘的な景観を呈している。見事な滝や渓谷を楽しみながら、田代発電所近くの伝付峠登山口には13時半の到着となった。ここまではコンクリート舗装道路が通じていて、車両乗り入れが可能である。歩きつかれて重い足を引きずりながら舗装道路を歩き、奈良田に通じるバス停のある田代入り口に下った。バスの通過時刻には1時間ほど余裕があった。車を回収し、早川町の公営の温泉「奈良田の湯」に浸かり、汗を流した。


大門沢を登り詰めて稜線に立つ(稜線分岐から見る農鳥岳と広河内岳)


広河内岳から農鳥岳方面と白峰南嶺を見る


広河内岳山頂 後方は塩見岳


大籠岳山頂


稜線からの展望を楽しむ


笹山北峰からの眺めと笹山南峰


笹山山頂は樹林帯の中、三等三角点と30分ほど下ったテント場


テント場から見る笹山と縦走路の白剥山

 
テント場から朝の荒川岳(悪沢岳)と蝙蝠岳・塩見岳



広河内岳 ヒロコウチダケ 標 高 2895m 標高順35位

山 域

南アルプス
登 山 記 録
登山月日 2005年9月24日
登山経路 9月23日
奈良田11:25〜バス〜奈良田発電所11:30〜登山ポスト12:00〜大門沢小屋14:50
9月24日
大門沢小屋5:35〜大門沢と登山道の合流地点6:50〜大門沢下降点9:15〜広河内岳9:45/10:20〜大門沢下降点10:45/11:30〜大門沢小屋13:50/14:00〜登山口15:40〜奈良田16:25
行動時間 1日目3時間20分 2日目10時間50分 合計(休憩時間を含む)
天  候 1日目晴 2日目曇・霧
メンバー 山友・宮澤和彦氏と二人

情  報

アクセス 奈良田湖の上に大きな駐車場がある
トレイル 大門沢小屋までは緩いトレイル 稜線直下は急坂だがよく整備されている
水場・トイレ 大門沢小屋上部にも沢水取れる トイレは小屋に
その他 白峰南嶺縦走果たせず


大門沢下降点から見る広河内岳


霧の広河内岳山頂とその周辺



霧が晴れた大門沢下降点から農鳥岳と鳳凰山方面

山行記

転付峠への登山口田代川発電所に車を置きに行くが登山口2キロ手前で崩落により林道閉鎖されていた。
登山者はここから1時間の林道歩きを覚悟しなければならないようだ。車は5台ほど停まっていた。

奈良田から大門沢を稜線まで登り、大門沢小屋と笹山に幕営し、転付峠まで縦走する予定である。

奈良田湖の1キロ先に大駐車場が完備されている。ここが広河原へのバスの発着場になっているが、秋の3連休の初日というのに10台くらいしか車が停まっていない。台風17号による天候悪化で登山をあきらめた人が多いせいだろうかと思う。
11時20分の広河原行きバスに乗り、わずか5分ほどの奈良田発電所前で下車、大門沢に延びる林道へ。30分ほど歩くと登山ポストが設置されていた。今日の同行者は一年に一度ご一緒していただいている山友・宮澤さんである。
登山ポストから10分ほどで本格的な登山道に入り、発電所の取水堰堤を越えると最初の吊橋にかかる。高さ20mはある吊橋はやはり恐怖感が沸く。さらに2回ほど吊橋を渡り、大門沢の右岸側の山腹をいやになるほど長い時間歩く。河岸は絶壁となっているのであろうか、登山道はだいぶ上部に切られていて、激流の音も遠くに聞こえる。
登山道に入ってから2時間近く歩くと大門沢の徒渉地点に出るが、ここには立派な丸木橋がかけられている。
上部を見上げると大門沢小屋の赤い屋根が見えてきてほっとする場所でもある。最後は激流の渕を歩いて小屋には15時前に到着した。
小屋番と話をすると、「転付峠からの登山道は崩壊のため登山出来ない。笹山まで縦走して転付峠までのコースは無理だ」という情報を得る。しかし車をデポした地点では、登山者も出かけるところを見かけたので、「まさか」と思うが、「早川町からそういう報告が来ている」といわれれば信用しなければと思う。
明日は笹山に幕営し、明後日にはここに戻ってくることに予定変更する。
小屋の前で持参した酒を飲んでいるうちに日は暮れて久しぶりの小屋飯を食す。カレーライスであるがすきっ腹に随分と旨く感じる。19時前には布団にもぐりこみ就寝。よくは眠れないがゆっくりと休むことが出来た。

翌朝は5時の朝食であった。粗末なもので持参した副食を取り出したいほどである。笹山の手前に幕営地があったら、そこに幕営してピストンしようと計画変更して5時半には小屋を出発する。水も4リットルを担ぐとザックが重い。
台風17号の接近により怪しい天気であるが、雨が降っていない限り前進しかないのである。
最初はシラビソ林の中、緩やかなトレイルを進む。1時間ほどで大門沢との合流地点に着く。見上げると大門沢の最上部は沢というよりは連続する細い滝のような感じである。いよいよここから傾斜の増したトレイルとなり、しっかりと汗と時間をとられるのである。先導の宮澤さんがしっかりと1ピッチ30分で休憩を取ってくれるので助かる。私はあえぎながらも何とか後に続く。朝、農鳥小屋を出た登山者が下ってきては激励してくれる。やはりこの大門沢は下り道利用者が多いのである。
樹林帯の中の巨石の道を登り切るとようやく森林限界を抜ける。朝、見上げたときはまだ稜線のスカイラインを見せていたのであるが、残念ガスが上がってきて霧雨状態の中になる。
雨着をつけて小屋を出てから3時間40分かかって稜線に飛び出す。稜線は風も吹いている。休憩も取らずに広河内岳を目指す。ペンキマークを追いながらガレタ道を30分ほど進み山頂に着く。
動きを止めると体温が急激に下がってゆくのがわかる。
休憩を取りながら思案する。
この先は踏み跡も薄そうで、霧雨の中でうまくトレースを拾えるか、笹山手前にキャンプ場所はあるか、不安が次々と沸いてくる。おまけに台風が接近中で情報がうまく入手できない。
宮澤さんと協議の結果、ここで引き返すことを決定する。
持参の食料を平らげ折角担ぎ上げた2リットルの水を捨てると、もう先に行くことをあきらめた。
引き返す途中から皮肉にもガスが切れ始め、今年8月縦走した対岸の仙塩尾根が見えてきた。さらに大門沢まで戻るとなんと青空が広がる。農鳥岳や鳳凰山も見え出した。「早まったかな」の思いが頭を過ぎる。
ここはいったん決めたこと、40分ほど展望を楽しみ、急坂の大門沢をゆっくりゆっくり下る。5時間かけて奈良田の駐車場にもどった。奈良田駐車場に着く寸前には大粒の雨が落ちてきて、やがて土砂降りになる。
転付峠登山口に車回収に回るころには車道に水が走り、台風の影響をもろに受け始めた天気を感じ、判断の正しさを自己認識したのである。

 

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