針ノ木雪渓〜蓮華岳〜烏帽子岳〜野口五郎岳〜竹村新道
(2006年)

蓮華岳 レンゲダケ 標 高 2799m 日本三百名山

山 域

北アルプス
北葛岳 キタクズダケ 標 高 2551m

山 域

北アルプス
七倉岳 ナナクラダケ 標 高 2509m

山 域

北アルプス
船窪岳 フナクボダケ 標 高 2459m

山 域

北アルプス
不動岳 フドウダケ 標 高 2601m

山 域

北アルプス
南沢岳 ミナミサワダケ 標 高 2625m

山 域

北アルプス
三ッ岳 ミツダケ 標 高 2845m 標高順47位

山 域

北アルプス
野口五郎岳 ノグチゴロウダケ 標 高 2924m 日本三百名山

山 域

北アルプス
南真砂岳 ミナミマサゴダケ 標 高 2713m 標高89位

山 域

北アルプス
登 山 記 録
登山月日 2006年8月31日〜9月2日
登山経路 8月31日
扇沢6:30〜大沢小屋7:50〜針ノ木峠10:30/10:40〜蓮華岳11:40/12:00〜北葛乗越13:10/13:20〜北葛岳14:20/14:30〜七倉岳16:00/16:10〜船窪小屋16:20〜船窪キャンプ場16:45
9月1日
船窪キャンプ場6:10〜船窪岳6:55〜船窪第二峰8:10〜不動岳10:40/10:50〜南沢岳12:20/12:30〜烏帽子岳分岐13:25〜烏帽子小屋14:10〜烏帽子キャンプ場
9月2日
烏帽子キャンプ場6:00〜野口五郎岳9:10/9:20〜南真砂岳11:00/11:10〜湯俣岳12:20〜湯俣温泉14:10/14:20〜高瀬ダム16:40〜タクシー〜七倉16:55〜(自転車)〜日向山バス停17:35〜(タクシー)〜扇沢16:10
行動時間 第1日10時間15分 第2日目 8時間 第3日目 10時間10分 合計28時間25分
天  候 第1日晴 第2日目 曇 第3日目晴
メンバー 単独

情  報

アクセス 扇沢までは問題なし
トレイル 蓮華岳〜烏帽子岳はアップダウンが続くが良く踏まれている
竹村新道も一部鎖場などあり、荒れてはいるが迷うことはない
その他は人気のトレイル
水場・トイレ 水場は針ノ木雪渓上部 船窪キャンプ場の崩壊地 湯俣温泉 その他各小屋で
トイレは各小屋で
その他 厳しいコースではあるがバラエティに富んだ縦走路
第1日目

扇沢を出て大沢小屋目指すとヘリコプタがしきりに飛び交う。遭難者の救助だろうかと気にかけながら登る。
大沢小屋で一息入れる。今日の行程が長いので先行者の情報を仕入れると、蓮華岳から船窪小屋に向かった者も確認できて一安心だ。何しろこのコースは北アルプスでも一番登山者が少なくて、出来れば近くを歩く登山者が欲しいコースである。
針ノ木雪渓は6年ぶり2回目である。すでに雪渓も細くなり秋道になっていて、雪渓の脇の荒れた登山道を歩かされるのだろうかと心配してきたが、今年は多かった積雪のせいか、まだまだ十分雪渓歩きを楽しむことが出来た。雪渓上部の沢で水を補給し、針ノ木峠到着は扇沢から4時間かかった。幕営支度の重いザックを担げばこれ位が当たり前の時間だろうと思う。
針ノ木峠で少し休憩し、蓮華岳を登る。山頂稜線は東西に長く、まだまだ夏の名残のコマクサが咲き競い、稜線漫歩が楽しめる。蓮華岳山頂では、槍ヶ岳から日本海まで縦走する茨城県の大学生に会う。そしてこれから船窪小屋を目指す埼玉のお医者さんの後を追うことになる。「蓮華の大下り」は、初めは山頂稜線と同じザレタ砂礫の道を下る。「大下り」等と大仰な名前が付けられているので「これは名前負けだな」と思った途端、岩稜の厳しい下りとなり、鎖場や梯子も連続し緊張を強いられる。そして狭い北葛乗越しへ。ここで大きく肩で息をしながら一息入れる。
北葛岳への登りも厳しい岩稜の中の登山道である。ここの登りで先行するお医者さんを捉える。私より5歳ほど若い先生で山の経歴は30年以上のベテランであり、このコースも何回も歩いていると言う。私はここから先、この先生の後を付かず離れずに追うことにする。北葛岳踏んで七倉乗越そして七倉岳と何回もザックをおろし休憩を挟みながら進む。ここのアップダウンも岩稜が続き、鎖場・梯子が随所に見られる。そして今日の目的地船窪小屋に到着した。
小屋はランプの宿として知られ、食事なども評判の山小屋であるが、私はここでキャンプの手続きをとり、20分ほど下った崩壊地の上にある船窪キャンプ場へ向かった。キャンプ場には一張のテントもなく、今日は私一人の貸切であって、寂しさとともに少々不安も募るのである。
水は厳しい崩壊地の上部に湧き、小屋の管理人が上手く取水できるように樋を設置してあって、本当にありがたいものと思う。何しろ今にも崩壊を起こしそうな斜面の中、梯子とロープを頼りに30mほど崩壊地の中に下らなければならないのである。しかしその水のうまさは先生に言わせると北アルプス随一なのである。
しっかりと水を確保した後、一人だけのテント場で静かな一晩を過ごした。


蓮華岳山頂・北葛乗越の岩場・北葛岳山頂

 
七倉岳から見る針ノ木岳と七倉岳山

第2日目


今日はピーカンの天気を予想してきたのであるが、起きてみると低い雲が近くの山々に纏わり付いていて、当てが外れる。しっかりと朝食をとり、パッキングを済ませキャンプ場にあるトイレで用を済ませて出発である。いつ雨が降りだすかわからない不安な気持ちで一杯だ。
崩壊地を左に見ながら、その脇をどんどんと高度を下げてゆく。北アルプスでも一番高度を下げる船窪乗越まで樹林帯の中を下る。ここには「不動岳まで3時間・烏帽子岳まで7時間」の標識が立っていた。しかしこれは立てる位置が間違いであると思われる。ここは針ノ木谷への分岐にもなっている。
船窪岳への登りはロープに掴まりながら岩稜をよじる。登りついたところが船窪岳山頂になっていた。更に小さなアップダウンを重ね、いくつかのピークを踏み、又大きく高度を上げ船窪第二ピークに立つ。こちらの方が高いので、これがガイドブックにある船窪岳主峰と思う。小屋を出た登山者と談笑しながらゆっくりと休憩を取る。
目の前には七倉岳側の大崩壊地が望まれる。恐ろしいほどの様相を呈して、崩落土砂が七倉ダムに白い帯を伸ばしている。北方には針ノ木岳から蓮華岳の稜線が黒光りしながら一際高く聳えている。どうやら心配した雨も大丈夫そうで少し安心する。
ここからは樹林帯を緩く30分ほど下ってゆく。そして又いくつかのアップダウンを繰り返しながら不動岳への登りになる。朝、烏帽子小屋を出た登山者と行き交うのもこの辺りである。「不動岳を越えれば後は楽になりますよ」と声かけられるが、重いザックを背負った足は昨日の疲れもあって、一向に前に進まなくなるのである。左側は常に崩壊地の縁を歩き登山道がどんどん樹林帯の中に侵食しているのがわかる。特徴ある巨岩を見ながら不動岳山頂にはキャンプ場を出てから4時間30分もかかって10時半の到着となってしまった。
不動岳からはハイマツ帯の中、堀割り状になった登山道を一気に下り、更に樹林帯を一回アップダウンを超えて南沢岳への登りとなる。ここも崩壊地の縁を緊張しながら慎重に登り、花崗岩と白い砂礫の南沢岳に到着した。ここまでは先行者のカウベルの音を聞きながら来たがここでその音も聞こえなくなった。雨は降らなかったが終始霧の中の登山道もようやく晴れ間も覗くようになり、明るい南沢岳山頂がまぶしいくらいである。しばし休憩の後、山頂を辞して烏帽子岳方面への道を進む。山頂からは岩場を二重山稜を呈する鞍部に下る。ここら辺は白い花崗岩とハイマツが作り出す自然庭園である。そして前方には烏帽子岳の尖った姿が印象的だ。今日の行程もあと少しになり、鞍部に広がる四十八池の景色を見ながら夏の名残の高山植物を愛でる。ゆっくりゆっくりと・・・。
烏帽子岳分岐まで来るが疲れた体に烏帽子岳を登る余力はない。4年前に登った烏帽子岳はパスしてニセ烏帽子に登り樹林の中を歩いて烏帽子小屋に到着した。時間的にはその先、野口五郎小屋まで進める余裕があったが、体力的にはここまでが限界であった。(最も野口五郎小屋のキャンプ場は永久閉鎖されていた)
小屋で手続きを済ませ、7年前と4年前にテントを張った場所に再びテントを張る。息子との思い出や、一人で赤牛岳目指したことが脳裏をよぎり、センチメンタルな気分に浸るのであった。
前線が抜けて一気に秋が訪れた烏帽子キャンプ場の夜は、寒さに震えてテントの中でただ我慢我慢の一夜であった。

 
船窪第二ピークから見る崩壊地と不動岳


 
七倉岳と不動岳・南沢岳山頂


南沢岳と分岐から烏帽子岳を見る キャンプ場では浜松のT氏と山談義を楽しむ

第3日目


寒さに震えて朝を迎える。キャンプ場には私を含めて二張のテントしかない夜であった。
テントの中で粗末ながらもしっかりと腹ごしらえする。そして小屋泊まりの登山者が皆出かけた殿を務めて出発である。三ッ岳への稜線をしばらく行くと、北アルプスの全容が開け始める。対岸の赤牛岳がその後ろの薬師岳の露払いを務めて赤い山肌を見せている。遠く野口五郎岳の先には槍ヶ岳も姿を現しだした。そして昨日歩いた烏帽子岳方面を振り返ると立山連峰や針ノ木岳・蓮華岳が朝日に輝いている。ここは間違いなく北アルプスのど真ん中裏銀座なのである。いつ来ても、何処を見ても飽きることのない北アルプスの山並みが続いていて感動の極みである。
登ったものとばかり思っていた三ッ岳山頂を確認のため登ってみる。三角点はあるが山頂標識のない、ここは未登頂であった。「踏んでよかったなー」と思う。野口五郎小屋へはだらだらと長く続く岩稜の稜線を行く。ここで先行の二組の夫婦登山隊を追い越すが、野口五郎小屋には3時間近くかかった。キャンプ場が廃止・閉鎖されたことをここで初めて知り、昨日の決断が良かったと胸をなでおろす。飲料水を補給し、小屋から15分の野口五郎岳を踏むころには三日目の疲れも出はじめて、少し気力が低下し始める。携帯電話を覗くと通信可能状態である。自宅に電話して「今夜は湯俣温泉でキャンプして、明日朝ゆっくりと帰る」旨を伝える。
野口五郎岳から真砂岳を巻いて、水晶岳への縦走路を行き、竹村新道分岐を左に折れる。今回の最大目標の南真砂岳が真砂岳から伸びる稜線の彼方にずいぶんと低く見える。裏銀座の縦走路が延びる東沢乗越や鷲羽岳が形成する荒々しい山肌を見ながらぐんぐん下る。(途中一箇所崩壊地をロープを頼りに大きく下る)南真砂岳の先には硫黄尾根を挟んで槍ヶ岳が迫り来る。「登り返しが大変だなー」と思いつつ鞍部に下り、ハイマツの中をゆっくり歩いて南真砂岳の山頂に立つ。目の前には槍ヶ岳が高く聳えていた。そして表銀座の大天井岳や燕岳が白い峰を見せている。硫黄谷の赤・南真砂岳の青と素晴らしいコントラストである。
山頂には今朝、烏帽子小屋を出た夫婦登山隊が休んでいたが私が到着すると山頂を譲って先に下って行った。
山頂では思いっきり大自然の景観をむさぼる。そして湯俣温泉への長い長い下りの道に入る。南真砂岳を振り返るとハイマツの緑に覆われた優しい山容は真砂と言うよりは青松岳の方が似合いの山だと思う。
先行した夫婦登山隊をすぐに追い越す。湯俣岳への登り返しの樹林帯の鞍部で昼食をとる。後は休むこともなく一気に湯俣岳に登り返して、そのまま湯俣温泉に駆け下ったのである。
湯俣温泉には14時過ぎの到着で、これから2時間半かけても高瀬ダムに下ろうと決断する。
高瀬ダムの湖畔道路を予定通り2時間半かけて歩き、タクシーが待機するダム上には16時40分の到着となった。タクシーで七倉まで下る。七倉にデポした折りたたみ自転車で1時間近くかけて日向山バス停に下る。
扇沢行きの最終バスには間に合わなかったので(最終バスは日向山17:20)通り合わせたタクシーに乗り、扇沢に回って車を回収する。
疲労困憊の山行ではあったが充実感一杯の気分で自宅に戻ったのである。


烏帽子キャンプ場から見る三ッ岳とその山頂 三ッ岳から野口五郎岳方面


来し方を振り返る針ノ木岳方面と立山連峰


野口五郎岳山頂と野口五郎小屋


いつ来ても、何処を眺めても飽きることのない北アルプスの山々


縦走路付近から南真砂岳と鷲羽岳

 
南真砂岳からの展望 


対岸の大天井岳と湯俣岳方面に下った登山道から見るハイマツの南真砂岳 湯俣温泉晴嵐荘に下る



船窪小屋から野口五郎小屋へ
(2014年夏)
船窪岳 フナクボダケ 標 高 2459m 山 域 北アルプス
不動岳 フドウダケ 標 高 2601m 山 域 北アルプス
南沢岳 ミナミサワダケ 標 高 2625m 山 域 北アルプス
登 山 記 録
登山月日 2014年8月13日〜8月16日
登山経路 8月13日
七倉8:15〜唐沢覗き10:05〜鼻付八丁11:50〜天狗の庭13:00/13:10〜船窪小屋13:55/14:05〜船窪テント場14:25 (泊)
8月14日
テント場6:10〜船窪岳7:05〜船窪第二峰8:35〜不動岳12:00/12:20〜南沢岳14:15〜ニセ烏帽子15:40〜烏帽子小屋16:10〜テント場 (泊)
8月15日
烏帽子小屋テント場6:50〜三ッ岳登り口7:40/7:50〜雪渓8:50〜稜線〜野口五郎小屋10:20 (泊)
8月16日
野口五郎小屋6:40〜稜線・お花畑分岐7:40〜三ッ岳登り口8:40/8:45〜烏帽子小屋9:15/9:20〜ブナ立尾根三角点10:20〜ブナ立尾根登山口12:20/12:30〜高瀬ダム12:55〜七倉14:15
行動時間 第一日目 6時間10分 第二日目 10時間 第三日目 3時間30分 第四日目 7時間35分 
合計 27時間15分 (休憩時間・ロスタイム含む) 
天 候 第一日目 晴 第二日目 曇 第三日目 曇/雨 第四日目 曇/雷雨/曇
メンバー カモシカ永井親子二人連れ登山隊
情   報
アクセス 七倉登山基地までは観光道路
トレイル 七倉尾根は鼻付八丁に代表される急坂 船窪小屋から南沢岳は崩壊地の縁を行くが良く整備されている
南沢岳〜烏帽子小屋〜野口五郎小屋は快適な裏銀座の稜線歩き ブナ立尾根も急坂ながらよく整備されている 高瀬ダムから七倉は天気が良ければタクシーが待っている
水場・トイレ トイレ・水は各小屋で 船窪テント場では崩壊地に湧水取れる
その他 起点の七倉岳と終点の野口五郎岳も踏みたかった
山行記

<第一日目>

今年のカモシカ永井親子二人連れ登山隊は七倉から七倉尾根を船窪小屋に登り(泊)、不動沢の大崩壊地の縁を廻って船窪岳〜不動岳〜南沢岳〜烏帽子小屋(泊)、そして烏帽子小屋〜野口五郎岳〜南真砂岳〜湯俣(泊)〜高瀬ダム〜七倉と云う周回コースを3泊4日で計画しました。もちろん幕営山行です。

台風11号が各地に爪痕を残して過ぎ去り、台風一過の好天を期待したのですが、本州上に前線が発生し北アルプス稜線上は思ったような晴れ間は期待できそうもありません。お盆休暇の13日自宅を6時前に出て、七倉には7時半の到着です。

登山指導所に登山届を提出し、8時過ぎにはゲートの先のトンネルから七倉尾根の登山道に入りました。七倉尾根は標高差1400mの厳し登山道です。

幕営支度で重いザックはムスコが担いでくれます。


最初から樹林帯の中急登が始まります。ザックが重く早くも根を上げますが、ムスコは一年ぶりの本格的登山にもかかわらず元気に先を行きます。30分に一本立てながらゆっくりと登り続けます。
最初のチェックポイントは「唐沢のぞき」で、登り始めて2時間・10時には通過できました。七倉尾根が始まる「唐沢のぞき」からはしばらく緩い登山道になり、少し息が抜けます。
11時過ぎに開けた樹林地で昼食休憩です。重い荷物もなんのその気合は充分です。


七倉尾根の最大の難所鼻付八丁で梯子場が10か所以上連続します。


鼻付八丁を過ぎて樹林帯を抜けると展望が開け天狗の庭に着きました。一息入れた後緩く登ってランプの宿の船窪小屋です。
船窪小屋から20分ほど下って崩壊地のわきにあるテント場にテントを張りました。ここに湧く水は北アルプス随一の名水です。

テント場の夜は風も無く静かに過ごすことが出来ました。


<第二日目>

今日は烏帽子小屋まで9時間コースです。
このコース8年前に幕営支度で歩いているので、コースタイムは分かっています。

4時には起きてしっかりと朝食を摂り、6時過ぎにテント場を出ました。

これから向かう不動岳が大崩壊地の先に見えています。


不動沢に切れ落ちる崩壊地の縁をぐんぐん高度を下げてゆきます。飲み込まれそうな恐怖感を感じる場所もあります。先ずは船窪岳を目指しますが、船窪岳も崩壊が進んでいます。200mほど高度を下げて船窪乗越に下ると右に針の木谷への道を分け、船窪岳への登りが始まります。昨日の疲れもあってザックが肩に食い込みなかなか足が進みません。
何とか船窪岳山頂に登りつきました。ムスコは余裕十分です。


鞍部に下り、船窪第二ピークへの登り返しは厳しいものでした。
ロープと木の根に掴まりながら必死に登り続けますが、ほとんど直登状態でてあしをつかってのぼりつづけ息が上がって体は上りません。
何とか船窪第二ピークに登り返しました。予定ではテント場から2時間でしたが、20分ほど超過していて、コースタイム通りには歩けないと感じたものです。下りが苦手なムスコですから致し方ないですが、顔色変えず頑張って歩いています。


転げ落ちたら止まることがない急坂と崩壊地の縁で緊張の連続です。常に左側は切れ落ちています。


第二ピークからの下りになってようやく落ち着いた登山道が樹林帯に続いていました。
一旦下りついた鞍部から不動岳が見えてきました。
登山道はアップダウンを繰り返しながら、そして再び崩壊地の縁を歩くようになります。


アップダウンは延々と続き疲労感を覚えるころになると、不動岳直下に来ました。

力を振り絞って岩場を登りきると不動岳山頂稜線に登りつきました。不動岳山頂です。ここまで5時間と思っていましたが6時間近くかかっていました。
山頂標識にはここから「南沢岳まで1:40・南沢岳から烏帽子小屋まで1:00」の標示がありました。


不動岳からざれた道を一気に下り、目の前の南沢岳もまた濁り沢に切れ落ちた崩壊地を見せています。
ここの登りもきついものでした。すでにムスコモ疲労感がありありです。何とか南沢岳に登りつきました。



予定より1時間以上遅れてしまい、烏帽子岳登山は諦めざるを得ません。
南沢岳を下ると霧が晴れて目の前に烏帽子岳が現れました。
烏帽子岳の基部二重山稜で、四十八池が広がる高層湿原です。
厳しい縦走路に安らぎを感じさせてくれます。


烏帽子岳への分岐を過ぎてニセ烏帽子に登り返します。
こちらからは鋭い岩峰が屹立していました。ニセ烏帽子を登りきると、眼前に明日予定の裏銀座のみつたけが見えてきました。

樹林帯に入って、ようやく今日の目的地烏帽子小屋に到着です。1時間のコースタイムと云う南沢岳からは2時間かかっていましたので表示の誤りですね。
幕営手続きをして上手くスペースがあって良い場所にテントを張ることができました。
烏帽子小屋のテンバにテントを張るのは今回で4回目となります。

ビールを飲み焼酎も口にすると食欲がわいてきません。それでも食べなければと思いレトルトの牛丼でお腹を満たしました。ムスコは疲れがあっても元気いっぱい旺盛な食欲です。

風もない静かな烏帽子テント場の夜でした。





<第三日目>

一日目は鼻付八丁に代表される七倉尾根の激坂を6時間かけて登りきり船窪小屋テント場へ、二日目は不動沢に切れ落ちる大崩壊地の縁を緊張しながら、5山の峰を踏むアップダウンの縦走を果たして、10時間かけて烏帽子小屋キャンプ場に着き、疲労が蓄積されています。

烏帽子小屋のキャンプ場の夜は風もなく快適で、夜間には半月も輝いていて明日の好天が期待出来そうでしたが、夜明け前に風が吹き始めテントを揺すりました。
4時には起きて朝食を摂り、テントを撤収パッキングを済ませると今日も6時過ぎの出発となりました。いつもテント場最後の出発ですが、今日は野口五郎岳〜南真砂経由しての湯俣迄の9時間コースです。慌てることはありません。



烏帽子小屋でトイレを済ませて出発です。テント場からは三ツ岳も良く見えていて、天気の崩れはあまり心配しませんでした。
テント場から少し下って岩稜混じりの尾根を三ツ岳に向かって登り返してゆきます。

途中で霧雨が舞い始めて雨合羽を着ました。
岩稜の尾根を登りきると砂礫の道になり、登山道の両サイドはコマクサが群生しています。


三ツ岳の肩に登り岩稜帯をトラバースすると、稜線コースとお花畑コースが分岐していました。
強風のため迷わずお花畑コースに入りました。ここは私は4回目になりますが、お花畑コースは最近開かれた登山道です。
やがて雪渓が現れて周囲はお花畑でチングルマなどが群生していました。
稜線コースと合流すると、野口五郎岳目指して岩稜と砂礫の交互する道が続いています。既に標高2800mを越えていますが、この高さでこんな歩きやすい登山道は北アルプスでは珍しいですね。
強風の中徐々に高度を上げて行きます。(下山時撮影)

この時点では湯俣迄一気に下るつもりでいましたが、今朝烏帽子小屋を出た数人のパーティが野口五郎小屋で引き返してくるものもあり心中は穏やかではありません。

強風と霧雨が吹きつけて雨合羽の中まで濡れてきました。

そして野口五郎小屋にかかるころにはさらに風強くなり、全身ずぶ濡れ状態です。
靴の中にも水が入ってクチュクチュと鳴ります。「自分一人なら野口五郎岳越えて竹村新道に入れば風も弱くなって一気に下れるだろう」と思うのですが、今日はそういうわけにはゆきません。一番心配なのは低体温症です。結局野口五郎小屋に避難を決めてムスコと二人駆け込みました。



まだ正午前でしたが同じ判断をした数名が小屋で寛いでいました。強風と霧雨突いて湯俣に下ったもの、水晶小屋まで進んだパーティも一度はここで休憩し行ったようです。(その後も水晶小屋方面からの縦走者が烏帽子小屋までの縦走をあきらめて駆け込み、20名くらいの宿泊者でした。)

部屋に案内され、濡れた着衣をせべて着替えると生きた心地が戻りました。濡れた雨合羽や登山着などは乾燥室で乾かすことができます。まさにこんな時は山小屋のありがたさが分かるというものです。キャンプ支度ですから食料も十分あるので自炊で申し込みましたが、自炊室も十分なスペースがあり、ゆっくりと食事をとれそうです。
今日強行して湯俣に下っても、高瀬ダムまでは行けないので、湯俣でテント泊の予定だったし、明日ここから下っても高瀬ダムまでの行程は問題ないと思えば、それほど慌てることもありません。
久しぶりの小屋泊まりにムスコは嬉しそうです。しっかり布団にもぐって昼寝です。

お腹も空いていないので昼食はとりません。

私はまだ残っていた焼酎を飲みながら同宿舎と山談義を楽しみました。

東沢を遡行して小屋に避難した「関西テレマーク協会」(?)を取りまとめしている、石原さんが山スキー・沢登り・トレイルランニングなどを熱ぽく語ってくれました。

夕食は自炊室で我が親子二人だけで摂りました。
粗末でも心温まるオヤジの手料理(?)に、ムスコも満足そうです。
いろいろ事情はありますが、私にとっては大切なそして自慢のムスコです。

食事をとればやることはありません。部屋に戻って布団の中に潜り込みました。
同宿舎は20名くらいでしょうか、布団一枚を確保できて、手足を伸ばして休むことができましたが、外の雨は一晩中小屋の屋根を叩いていました。


<第四日目>

野口五郎岳に登って、竹村新道を湯俣に下ろうかと思いましたが、悪路が続く竹村新道を下るより、烏帽子小屋に戻ってブナ立尾根を下ることにしました。「竹村新道は以前一度下っているし、2度登ったブナ立尾根はまだ一度も下ったことがない」のも選択理由の一つです。
出発時に小屋番に確認すると今朝高瀬ダムに下った者は湯俣コースとブナ立コース半々のようですが、小屋番は「ブナ立尾根を下る方が早く安全だ」とアドバイスしてくれました。
挨拶して小屋を出ましたが、霧が巻いてはいましたが雨は降っていません。



小屋前の分岐で野口五郎岳登頂も考えましたが、3度も踏んでいるので登頂は諦めました。
「これが最後の裏銀座・野口五郎」とは決して思わない、北アルプスのど真ん中後にします。
「絶対又来るからね」
竹村新道は目の前に槍ヶ岳を見ることができますが、霧の中では展望もないし、烏帽子小屋に戻るコースはお花畑を再び見られるという楽しみがあります。
時々は雲の切れ間から陽が射して、東沢対岸の赤牛岳方面に虹がかかりました。


時々霧雨が舞いましたが、お花畑・稜線ルートの分岐に戻りました。
一度は稜線周りを考えましたが、近道のお花畑ルートに入りました

裏銀座で見た花々




岩稜帯をトラバースして三ツ岳の肩から砂礫の道に下ってきました。両サイドにコマクサ群生するところで一息れます。


そして烏帽子小屋に戻ってきました。

野口五郎小屋から烏帽子小屋までは2時間半ほどかかりましたが、ほとんど下りばかりで疲れは感じません。この間に交差した登山者は単独行3名・大学生の5人パーティ1組だけでした。この夏雨に祟られた北アルプスには、夏がないまま秋を迎えそうで寂しいばかりです。
烏帽子小屋で休んでいると山岳パトロールの方がいろいろと話しかけてくれましたが、このまま夏山シーズンが終わるのは山小屋としても痛手ですね。

対岸に雷雲が見えるので急いでブナ立て尾根に入りました。
ブナ立尾根を下り始めた途端、雷鳴鳴り響きました。そして猛烈な雷雨になり、少し慌てます。
「樹林帯に入ってからの雷で良かったなー」とムスコと声掛けあいながら、水路となった登山道を慎重に下りました。

登山道は0番(烏帽子小屋)〜12番(登山口)までの道標があってとても良い目安です。大概10番までと思うので登山口が12番とは想定外でしたが・・・。
一時間ほど下った4番札が三角点で良い休憩場所です。雷雨ですから長続きはしません。ここまで下る頃には雷雨も小康状態になりました。
そして次は7番札まで下り一休み、水分補給です。
残りはあと3番・10番札が登山口と思っていましたが、12番まで休むことなく下りました。
登山口の取りつきは急坂の岩場に鋼製足場が掛けられていました。

いつも下りが苦手でオヤジの後塵を踏むムスコも頑張って、それ程の遅れはありませんでした。


烏帽子小屋から3時間ほどで登山口に着きホッとしました。この時は雨も止んでいて、砂場に腰を下ろして昼食のパンをかじりました。濁流が高瀬ダムに流れ込む濁沢です。登山道を下る頃には上流で大きな音を立てて崩落していました。
10年くらい前でしょうか、ここで高瀬ダムに流された女子大生がいましたね。たしか発見されなかったと思います。
そして不動沢の吊橋を渡ります。


不動沢の上流を望むと一昨日歩いた崩壊地の上に船窪岳が見えました。
吊橋を渡ってトンネルを歩いて高瀬ダム提頂に出ました。とても大きなそして高いロックフィルダムです。


高瀬ダムの提頂上にはタクシーは来ておらず、結局七倉まで歩くことになりました。
私達より先を歩いてブナ立尾根を下った3人組も、重い足を引きずりながら、少し先を歩いていました。そしてその先には単独行も歩いています。

ジグザグ切ったダム提の道を下って行くと七倉の登山基地まで「5000m」の標識がありました。これが最後の試練とムスコを後にグングン歩き、先行の3人組を追い越して、いくつかのトンネルをくぐって七倉の登山基地には高瀬ダムから1時間15分・14時過ぎに下りつきました。ムスコも必死に歩いて最後は二人一緒に笑顔のゴールでした。

2014年「カモシカ永井・親子二人連れ登山隊」の恒例日本アルプス縦走山行はこれにて滞りなく完了しました。
来年もまた幕営山行ができるように体調管理に徹したいと思っています。「小屋泊まりという安易な手段を選べば、一度楽してしまえばその後は・・・」という思いもあります。
「幕営山行命」をもうしばらく続けたいですね。

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