御前岳 ゴゼンダケ 標 高 1816m 一等三角点百名山

山 域

飛騨山地


森茂峠を越えて一ノ谷でキャンプ


林道の崩壊地は上部を高巻、対岸の豪快に流れ下る沢に圧倒されながら三ノ沢出合に着く


三ノ沢では5m程の徒渉が有り、清流の冷たさに悲鳴を上げる


小潅木の中の藪漕ぎをしのいで1700m地点から現れた残雪にほっとする


前山山頂直下では御前岳が望まれる


前山から少し下って見る笹原の御前岳


笹原の中にひっそり佇む一等三角点標石


一緒に山頂を踏んだメンバー


登ってきた後を振り返る    後方が栗が岳


白山遥拝地として昔は森茂から登られたという山頂から

登 山 記 録
登山月日 2006年5月31日〜6月1日
登山経路 5月31日
旧清見村大谷・森茂林道入口〜森茂峠〜森茂部落跡〜一ノ谷(幕営)
6月01日 
一ノ谷5:35〜林道廃道(崩落地2箇所高巻く)〜三ノ谷7:15/7:30〜1700m(残雪)10:00/1010〜前山10:30〜御前岳11:10/11:50〜三ノ谷ワサビ田13:40/14:00〜三ノ谷14:10/14:30〜一ノ谷16:20
行動時間 一ノ谷幕営地から 登り 5時間40分 下り 4時間35分 合計10時間55分(休憩時間を含む)
天  候
メンバー O山岳協会のメンバー6人 山画新内(蕎麦)太夫氏と合計8人のグループ登山

情  報

アクセス  
トレイル 一ノ谷から先の林道跡は崩落が激しく2箇所崩落地を高巻く。
三ノ谷出合からは薄い踏み跡らしきがあるが山頂まで間断なく藪漕ぎが続く。
1700mから上には残雪あるが既に薄い。
山頂直下(約150m)はネマガリダケの中をかき分けて進む。
水場・トイレ トイレはなし 水場は三ノ谷が最後
その他 残雪期を逃すとこのルートしかない藪山の難関

山行記

今回はO山岳協会のI田リーダーそしてウルトラ山吉のZ女史が企画してくれた難関・御前岳アタックであって、参加者はO山協から御両名のほか男性2人・女性2人、更に今や快調ブログでネットの寵児としてつとに有名なY井さんと私を含め8人のグループ登山である。メンバー皆が難関であることを認識している上、それぞれが素晴らしい山行経歴を誇っている。
前夜の一ノ谷付近でのキャンプは楽しいものであった。私用で半日遅れて到着した私を歓迎してくれてうれしい限りだ。料理上手な女性のトンシャブや持ち寄った肴でビールや焼酎を楽しみながら夜が更けるまで山談義で盛り上がる。私はYさんのテントに入って更に30分ほどの会話を楽しむ。Yさん・Z女史は同年生でも有り、私の山友の中でも一番気の置けない仲間なのだ。
夜空には満天の星が輝き、明日の好天が予想されると何の心配もなくテントの中で爆睡状態に陥るのであった。

翌朝、4時過ぎには女性陣が起きだして朝食の支度をしてくれる。前夜の酒気が残って、けだるい体を起こす。しかし泣き言は言っていられない。長丁場は十分覚悟しているのでしっかりと朝食をとる。(昨夜の余りにご飯を入れたオジヤだ)
なるべく軽荷にし、ザックを担いで5時半には行動開始だ。天気は全然心配ないぴーかんである。廃道となって草木が道を塞ぎ始めた林道跡を黙々と進む。昨夜の酒が影響してか、しんがりを歩く私はグループから離れがちになる。一ノ谷・二ノ谷の橋を超え歩き始めて40分もすると林道が河床まで崩れた大崩壊地に着く。最初の崩壊地は5m先には林道跡が残っていて、ロープを垂らせば渡れそうだが、ここで思案する。安全第一で崩壊地を高巻く事にする。崩壊するような地形であるから、山の傾斜はきつい。ここは私の出番と思い、リーダーの後ろに付けて、携帯剪定鋸で小枝や藪を刈る。木の根や熊笹につかまりながら30mほど高度を上げて樹林の中をトラバースする。更に急傾斜を慎重にくだり、林道跡に下りて200mほど進むと、今度こそ長さ200m・高さ50mを超える絶体絶命の大崩壊地を越えなければならない。ここも又、IリーダーとOサブリーダーの的確な判断で安心して高巻くことができた。実は昨日下見に来ていたのである。再び林道跡に下り立ち、対岸を流れ下る豪快な沢に歓声を上げながら歩を進める。三ノ谷と奥御前谷の出合のすぐ前にはたコンクリートの橋台があり、森茂川本流の川原には鉄骨の橋桁が残骸を横たえていて、すさましいばかりの惨状を呈している。橋台を川原に7mほどくだり、左岸に道を探すが見つからない。わずかな距離ではあるが登山口を脱いで徒渉をしなければならない。雪解けの清流に素足を入れると冷たさに飛び上がり、悲鳴を上げながら徒渉する。そこからわずか先の御前岳を源にした奥御前谷は登山靴を濡らすこともなく飛び石伝いで超えることができた。
いよいよ御前岳への取り付きである。ここまで歩き始めて2時間を過ぎていた。メンバーはそれぞれ軽食を口にしながら小休止する。私はようやく酒の気が抜けて精気が戻るが何も口に入らない。最後の水場とあって1リットルのペットボトルに水を補給する。Iリーダーを先頭に私が剪定鋏で薮きり役を果たしながら2番手に入り、その後を女性が続き道なき薮山に入る。登り口には古い赤布が下げられていた。
最初は杉の植林地であるが下草・小潅木がはびこって煩わしい。少し進むと薄い踏み跡に出るが登山道跡かは定かではない。小潅木に笹の絡まる急傾斜の山であってはなかなか前には進まない。木の根・笹につかまりながら足場を確保し体を持ち上げる。更に私は少しでも道を開こうと鋏で薮をきるのでみる見る間に汗まみれとなり体力消耗が激しい。こういう状態での行動は30分が限度であって30分おきに一本入れる。
再び薮の中に薄い踏み跡が現れて、古い赤布もところどころに見ることができると、道をはずしていないことが分かり気分は和らぐ。三ノ谷を隔てた対岸の山はびっしりと残雪を張り付けている。早くあの高度までと思うのであるが、登っている山は南向きの斜面であって残雪の期待は薄い。
樹相はスギの植林地からブナの若木帯そしてダケカンバと変わり、ブナ林の中にはミズナラの大木も見える。しかしその傾斜はあまり変わらない急登が続く。ネマガリダケの密度が濃くなってシラビソの木が混じるようになるとようやく山頂稜線が望まれるようになり、高度計が標高1700mを指すころには残雪が現れてほっとする。しかし残雪はそのまま山頂まではつながってはいない。
大きな露岩を右手に見ると山頂稜線の突起・前山は近い。潅木帯を抜けると背の低い笹原を前山まで歩く。御前岳の山頂は笹原の先に目の前だ。
鞍部に少し下って最後の登りになる。ネマガリダケの密生地をIリーダーが笹薮を分ける。薮が元に戻る前に後続が倒れた薮を踏む。それを繰り返しながら150m程進むと薮が刈り払われた山頂に到着した。
一等三角点が薮に埋まりそうに静かに佇んでいた。周りの笹を少し刈り払いして写真に収める。全員で万歳三唱をして難関・御前岳登頂の感激を分かち合う。
西方には少し霞んで白山が輝いている。北は籾糠山や猿ガ馬場山、東方は御前岳から栗が岳へたおやかな稜線が続いている。そして南側には今登ってきた御前岳の急傾斜の山容が見えるのである。飛騨の一等三角点の名峰御前岳は絶好の展望台なのである。
難関を制して大満足の顔をカメラに収めながら昼食を取る。
40分の山頂スティの後、Oサブリーダーに先頭を代わり、登りに付けた赤布を追い、それを回収しながら忠実に薮山を下る。昨年、山吉・Zさんが確認しておいた登り口のワサビの群生地に出て山の幸を少し摘む。
三ノ谷の徒渉では登山靴を脱いで冷たい清流に再び悲鳴を上げる。
2回の崩壊林道の高巻も疲れた体には厳しいものであるが何とか踏ん張る。更に林道を40分歩いてキャンプ地に全員無事帰還したのである。
朝5時から11時間を越えるロングランを制して満足と充実の御前岳ではあった。

 

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