東海谷山塊の山(阿弥陀山・烏帽子岳)

阿弥陀山 アミダヤマ 標 高 1511m 越後百山

山 域

海谷山塊
登 山 記 録
登山月日 2007年11月15日
登山経路 糸魚川市御前山・三峡パーク6:20〜取水堰堤(732高地)7:25〜尾根取付8:00〜阿弥陀山山頂11:05/11:15〜取水堰堤13:55〜三峡パーク14:55
行動時間 登り 4時間45分 下り 3時間40分 合計 8時間35分(休憩時間を含む)
天  候 晴/雨
メンバー 単独

情  報

アクセス 三峡パークまでは舗装道路
トレイル 海谷高地の取水堰堤までは登山道あるがそこから先は赤布もない完全な藪山
水場・トイレ 尾根に取り付く前に沢水取れる トイレは三峡パークにある
その他 断崖絶壁の海谷渓谷を越えて踏み跡もない藪山を行く

山行記


阿弥陀山山頂の日光寺ご本尊分身

 
尾根伝いの烏帽子岳と阿弥陀山南峰


西海谷山塊もシルエットを映す後方は雨飾山


三峡パークから見る海谷渓谷と断崖絶壁の岩場


早川郷吉尾平から見る阿弥陀山・烏帽子岳

2週前には早川郷の見滝部落に烏帽子岳・阿弥陀山の登山道探しに出掛けた。
見滝の林道入口の古民家の老婆に阿弥陀山への道を尋ねると「40年位前は部落の有志で毎年阿弥陀山登山を行っていたが、その時は深夜2時に見滝を出て、阿弥陀山にはお昼ころ着いたそうだ。そして帰宅は日暮になった。今はもう登る人もいなくて道はないだろう」と言う話を聞かせてくれた。これでは見滝からの谷根林道も車が入ることは無理であろうと判断する。
その足で烏帽子岳に一番近い早川郷の砂場に向かい、山間部に拓かれた棚田を詰める。ここでも地元の古老に道を聞くと「直ぐ近くに見えてもこちらからの登山道はない。残雪時に登っているものはあるようだが・・・」と言うことであった。「春、雪が消えるのを待って、樹木の間を縫って稜線に登り、山菜取りに行くものが多いから、その跡が残っているかもしれない」と言って山菜取りルートを教えてくれた。
翌日、それでも「直登するルートがあるだろう」と淡い期待を抱いて、再び棚田の終点まで車をつけて、烏帽子・阿弥陀山山麓の吉尾平に延びる林道を歩く。1時間畔ほど歩いて吉尾平に着くと「湯道」「六佐衛門道入口」という立派な看板の立つ登山道が阿弥陀山に向かって延びていた。私は小躍りしてこの道に入る。しかしこの道は吉尾平の雑木林の中を進むだけでさっぱり高度を上げない。結局、阿弥陀山南峰と鉢山のコルに延びていたが、そこで消えていた。ここまでくれば阿弥陀山山頂までは僅かな距離ではあるが、山頂直下には険しい岩場が見えて、とても山頂には登れそうもない。コルからは海川を隔てて鋸岳や駒ケ岳も見える。失望しながら「湯道」を吉尾平に戻り、林道を棚田の終点に止めた車まで戻る。
麓の部落に戻り、再度古老に訪ねると「湯道は早川郷から海川を越えて小谷温泉に延びる古道であって、その復活を進めているところだ」と言う。烏帽子岳へはこの早川郷砂場から何とか登れそうなので来春の楽しみにする。

翌週は糸魚川市御前山の三峡パークから海谷高地を目指し、阿弥陀山への登山ルート探しに出かける。三峡パークから断崖絶壁が続く海谷渓谷を1時間ほどで発電所の取水堰堤に着く。海川の川原が開けていて、ここが「海谷高地」・「732高知」と呼ばれ、「越後の上高地」とも謳われているところである。ここから先は登山道はない。それでも海川の川原に生える樹木には赤布も下げられていて踏み跡が上流に続いていた。
阿弥陀山は左側に見えるのだが山頂はここからは特定できない。海川を30分ほど遡り、鉢山と阿弥陀山南峰から流れる沢に足を踏み入れるが人跡未踏の沢であった。登りきれば先週歩いた「湯道」に出るのだろうと思う。川原に引き返すと熟練の地元者と思われる登山者がいて、しばし阿弥陀山のルート探しに乗ってくれる。そして阿弥陀沢は取水堰堤から50mほど上流の右岸に合わさる沢であることを特定する。
取水堰堤まで下り、小さな沢の阿弥陀沢に入ると僅かながら人の歩いた形跡が見られる。水量も少なく飛び石伝いに沢を詰めることにする。小さな滝もいくつか現れるが、樹林の中をかき分け高巻きながら徐々に高度を上げてゆく。「旨く稜線に出れれば良いなー」と淡い期待を抱きながら2時間ほど沢登りを続ける。しかし稜線まで後200mくらいと言うところで、結局滝と岩場に阻まれて進路が取れなくなる。又も失望感を感じながら海川の川原に退却する。
川原に下りた後、現況と地図を見ながらルートを探す。良く見ると今歩いた阿弥陀沢の南側の尾根が直接山頂に延びていることがわかる。「次はあの尾根を登ってみよう」と心に決めて三峡パークに戻った。
御前山の部落で農作業中の古老に阿弥陀山へのルートを尋ねると「20年ほど前にその尾根を登って阿弥陀山の山頂に立った」と言う、嬉しい返事が返ってきたのである。間違いない阿弥陀山へのルートを探したと確信したのである。

3週目も三峡パークに夜明け前に着いた。車中で朝食をとりながら夜明けを待ち、歩くのに支障がない明るさになるのを待って海谷高地への道に入る。登山ルートの心配はないが午後からは雨模様の予報が気に掛かる。首尾よく阿弥陀山頂に立ったら烏帽子岳への道も確認したいし、「あわよくば烏帽子岳も登頂」の欲望も湧いてくるのである。
予定通り1時間と少しで海谷高地に着き、休むことなく阿弥陀沢に入る。阿弥陀沢を10分ほど詰めると、右側に小さな尾根が現れる。前回はそのまま沢を詰めたのであるが、今日は10m程の草付の斜面を駆け上がって雑木林の尾根に登りつく。尾根の反対側にも小さな沢が流れていた。阿弥陀山の南峰と北峰の間を流れる沢である。確認の為反対側の沢に下って踏み跡を探してみたが、それらしきものは見当たらないので再び尾根に登り返す。そして尾根を忠実に直登を始める。
急坂の尾根の高みを一つ乗り越すと尾根の雑木に鉈目が見られる。「間違いなくここを歩いたものがいる」ようで、いよいよ「これを登れば阿弥陀山」の思いが強くなる。先週登った阿弥陀沢とは徐々に高度差がついて行く。海川の反対側の駒ケ岳が高度を確認するよい目安になる。尾根の雑木は葉っぱを落としていて何の木か分からない。そして豪雪地帯のために枝が水平に張った雑木が多く、ヤブコギも大変である。しかしクマザサがないのが一つの救いだ。体に絡まるツルの木は剪定ばさみで切り、黙々と進むのである。単独行であるから自分のペースでよいのだ。疲れたら休みを取りながら切り開きながら進む。赤布も用意したが付ける必要もない。
先週行き詰まった阿弥陀沢の滝を上から眺めながら進むと、小さな沢が分かれて尾根の近くまで延びていた。その沢に下りたい誘惑が湧くのであるが、沢の上部は岩場であることを学習しているので、迷うことなく尾根を登り続ける。やがて尾根が消える。少し右側に大きなコメツガが数本立つ林が見えてきてよい目印である。そこに着くと上方が見渡せるようになり、右側には阿弥陀南峰の岩峰が見えてきた。いよいよ山頂は近いことを確認する。
更に2箇所のコメツガを目印に登る。傾斜がきつくなり樹木の枝は更に密生となり枝をくぐるように這い上がる。やがて阿弥陀山北峰も見えてきた。南峰との大ギャップを見ながら少し痩せた岩場を越えると、どこから延びていたのか藪が切り開かれた登山道になっていた。そしてしばし喘ぐと「日光寺のお守り本尊」の石仏が叢に現れた。そこに着くと、もうそこより高いところはなかった。海谷高地から3時間半のヤブコギを凌いで、とうとう阿弥陀山山頂に立ったのである。
標高1500m足らずの山頂であるが私にとっては随分と遠く、そして高い峰であった。誰もいるはずのない海谷山塊に大声上げて万歳三唱する。曇り空の下ではあったが、左側には尾根続きの烏帽子岳、右側には大ギャップを隔てて阿弥陀南峰が指呼の間だ。その先には昼闇山から焼山に続く頚城の高山が雪を被って頭を雲に隠しながら連なっている。そして振り返れば海川を隔てて西海谷山系の鋸岳〜鬼が面〜鋸岳の特異な岩峰が逆光の中にシルエットを映し出している。さらにその先には雨飾山が雪化粧した姿を見せている。晴天であれば飽くなき景色に見とれるのであるが生憎の天候である。
いつ雨が落ちてくるのかと思うとゆっくりはしていられない。昼食をとった後、慎重に下山に掛かる。目印はコメツガの木だ。「登りよりは下りが大変な藪山」は十分認識しているのである。2〜3回道を失うが、しっかりと確認しながら登った尾根に入ることができた。後はただひたすらに下るのみである。下山道の半分くらい来た地点で急激な天候の変化が現れる。見る見る間に谷間に入ってきた雨雲が辺りを覆いつくしてしまう。そしてしとしとと雨が降ってきた。予想していたとはいえこの雨には失望する。雨着を付けるがズボンはそのまま濡れるにまかして下山を続ける。
山頂からは2時間半で海谷高地の取水堰堤に到着するころは雨脚も強くなり、阿弥陀沢や海川は増水していた。とにかく海川の徒渉地点を早く突破しなければと思い足を速める。濡れたついでと思えば沢の中に登山靴のまま入って海川を徒渉する。周囲の千丈岳の大岩壁には雨水を集めて見事な滝がいくつも流れ落ちていた。カメラに収めようとするのだが雨のためそれも叶わなかった。
下半身びしょ濡れになりながら、駐車場の三峡パークには15時に到着した。誰もいない広い駐車場で着衣を全部着替え、濡れた体をバスタオルで拭いて着替える。さっぱりとしてそして意気揚々と帰路に着いた。

 


烏帽子岳 エボシダケ 標 高 1450.5m 越後百山

山 域

海谷山塊
登 山 記 録
登山月日 2008年9月4日
登山経路 糸魚川市谷根区見滝集落〜車〜谷根林道入口6:05〜林道終点(登山口)7:10/7:15〜砂場分岐跡9:00〜阿弥陀山分岐9:30〜稜線9:55〜烏帽子岳10:10/11:05〜阿弥陀分岐11:30〜砂場分岐跡11:50〜林道終点13:10/13:15〜自転車〜林道入口13;45
行動時間 登り 4時間05分 下り 2時間40分(林道入口から)  合計 6時間40分(休憩時間を含む)
天  候 曇・霧
メンバー 単独

情  報

アクセス 見滝集落跡から林道ゲートまで舗装道路
トレイル 林道は緩く登っている。登山道は一部ヤブ被さるが道迷いするほどではない。
稜線上は完全にヤブ化している。
水場・トイレ 水場は途中2ヶ所沢水取れる トイレは見滝集落にもない
その他 林道歩きが大変と言われていたが何も問題もなく山頂に立てた

山行記


谷根林道入口はロープで進入規制されていた。1時間ほど歩くと林道終点につく


林道終点には烏帽子岳登山口の標識が立っていた。
一部ヤブが被さる所もあるが迷うことのない登山道を1時間40分で砂場への分岐(現在は廃道)につく
ブリキ板は丸めて木陰に隠されていた(写真を撮った後もとの位置に戻しておいた)


赤布が下がる)ヤブが被さる登山道を進むと阿弥陀山への分岐につく


稜線に出るとヤブ化した中慎重に進み山頂に着く。阿弥陀山が目の前だ。


展望の利かないガスの中の烏帽子岳山頂

東海谷の烏帽子岳は阿弥陀山と同じ山塊にあり阿弥陀山とは大きなギャップを隔てているが兄弟峰の岩山である。昨年秋、この両山を登ろうと早川郷の見滝集落を訪ねた結果、登山口までの谷根林道が長く荒廃化していて車の進入は無理であることを知り、見滝からの登山を諦めざるを得なかった。
その後、阿弥陀山は三峡パークから海谷高地を経て登り、烏帽子岳への登山は砂場側からの旧道を探していたが、廃道化して無理な状況を知った。結局、長い林道歩きは下りに自転車を使い時間短縮を図ることを覚悟して出かけたのである。

見滝集落は廃村化された感があり、今は1〜2軒しか残っていない。集落跡を過ぎると山間に田圃が拓けている。田圃の中の道を詰め、林間に延びる山道に入り、1キロも進むとロープで進入規制された林道ゲートがあった。ゲート脇には「進入禁止」の看板が立てられていた。車の転回も出来るのでここに車を止めて、折りたたみ自転車を引きながら林道に入る。林道に入るとすぐに舗装道路はダートに変わる。それでも道路の傷みは少なく、登りでも所々は自転車に跨ぐことが出来た。しかしそれも最初のうちだけで林道は雑草に覆われてひどい状況になり、朝まで降った雨で着衣は濡れるままである。自転車を引きながらの林道歩きは辛いところもあるが、下りを考えると楽しみでもある。
2時間はかかるであろうと思っていた林道歩きも1時間10分で林道終点に到着した。終点には「烏帽子岳登山口」の朽ちた木製ポストがあり、安心するとともに拍子抜けするのであった。
間違いない登山口を見つけ安堵しながら朝食をとる。登山口を入ると「どうしてこの山が登山道のない山にはいるのか」と思うほどのしっかりした登山道が続いていた。最初の急登を登りきると「土山」と刻印された標石があった。更に進むと、右側から藪を分けて道があわされていて、近くの岩には赤ペンキでマークがしてあり赤布が藪の中に導かれていた。誰かが歩いた短縮口の案内かと思う。その直ぐ先には二つの大岩があり、登山道は大岩の間を抜けて延びていた。ここらから徐々に道は細くなり、湿地は雑草で覆われて道を隠していたが、赤布が下がっていて迷うことはなく進むことが出来る。
やがて稜線に出て烏帽子岳や阿弥陀山が望まれる。右側には雪食地形が見える。ここからアップダウンを2度ほど繰り返し鞍部に下ると、木陰にブリキ板が丸められて置いてあった。ブリキ板を開いて見ると、ここが「砂場」への分岐であることが分かる。周囲を確認したがそれらしき分岐は何処にも見えず、今は完全に廃道化して危険な為に案内看板も外されたものと思う。
登山道は尾根を外し、山腹を巻くようになり、烏帽子岳に近づいてゆく。やがて直進する登山道を塞ぐように横に伸びた雑木に「←烏帽子岳」のブリキ板が巻かれていた。直進すれば阿弥陀山への分岐である。ここからは急坂となり尾根を目指していた。最後はロープも下がり、左側は切れ落ちた崖の縁をよじ登り烏帽子岳山頂稜線に登りついた。対岸の鉾が岳が見えるが火打山や焼山方面はガスに覆われていた。
完全にヤブ化した稜線を雑木を掻き分けながら15分ほど慎重に進み、二等三角点の烏帽子岳に到着した。昨秋登った阿弥陀山は目の前であるが、ガスに包まれる直前であった。雨で濡れた草木を掻き分けてきて、着衣はびしょ濡れである。難山といわれる烏帽子岳山頂に立って、気分は上々だ。ブヨや虫が煩い山頂で、腹ごしらえをする。
ガスが晴れるのを1時間近く待ったがその気配もないので山頂を後にした。林道終点の登山口には山頂から2時間で下り、林道は自転車で30分で下ることが出来た。
最初からこの状況を知れば何も悩むことのない烏帽子岳ではあった。案外人生と言うものはこんなものかと思わせられるのであった。「案ずるよりも産むが易し」

 

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